幾重にも連なった白いリングが床から天井までを埋め尽くす教会。飾り?それとも何か意味がある?
大阪湾に臨むハイアットリージェンシー大阪。敷地内の池のほとりに、白いいびつな六角形のチャペルが立つ。ガラス張りの室内は、オーガンディのカーテン越しに柔らかな光が満ちる。池に面した壁一面にはいくつもの白いリング。向かいの壁の下部に張られた鏡にもぼんやり映る。カーテンに織り込まれた環状の模様も重なり、白い光の中で無数の円に囲まれているようだ。
設計は、建築家の青木淳さん(64)。来月、通称「京都市京セラ美術館」として開館予定の京都市美術館の改修も担当、館長にも就任した。本作では、原初的な祈りの空間をイメージし、永遠を意味する円環を重ねて「空気でできた洞窟」を造ったという。鉄製の円をピラミッド状に溶接して上下左右に重ね、柱と変わらぬ強度を生み出した。通常建物を支える構造体は表に出さないが、円環の骨組みはあえて見せている。むき出しの鉄骨の硬質感を和らげるため、特注のカーテンをかけ、霧にかすむ岩に見立てた。「以前から霧が固まったような建物を造りたくて試行錯誤していました」と青木さん。本作で機が熟し、神社に霧が立ちこめるような世界観を表現できたという。
ホテルでは、この建物を「エタニティ(永遠)」と呼んでいる。婚礼担当の山岡功治さん(44)は、ここで式を挙げた何人もの新郎が入場直後に涙した姿を見たという。「温かい雰囲気に緊張がほどけるんでしょうね。重なったリングが屋根を支える。結婚を象徴する建物です」とほほえんだ。
(山田愛)
DATA 設計:青木淳建築計画事務所、アトリエ・ジーアンドビー、大林組 《最寄り駅》 中ふ頭駅 |
本作からコスモスクエア駅方面へ15分ほど歩くと、ガラスで覆われた半球体が海に浮かぶ。建築家ポール・アンドリューによる旧大阪市立海洋博物館の一部だ。現在は閉館しているが、岸から外観を望める。