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ヤマトインターナショナル東京本社(東京都大田区)

重なりが生み出す調和

「建物のなかの都市」を意識し、凹凸が多数ある特異な形状をつくった=郭允撮影
「建物のなかの都市」を意識し、凹凸が多数ある特異な形状をつくった=郭允撮影
「建物のなかの都市」を意識し、凹凸が多数ある特異な形状をつくった=郭允撮影 社屋のデザインのほか、各部屋の窓にはそれぞれ違う図柄のエッチングが施されている=郭允撮影 公園を拡張するためにつくった中庭=郭允撮影

ランダムに配置された様々な図形。不自然に多い凹凸。いったいどんな構造? 何を意味しているの?

 東京湾岸の倉庫街。長さ140メートル、高さ40メートル、巨大な軍艦のような威容と、細部の複雑な造形が印象的な建物は、アパレルメーカー・ヤマトインターナショナルの東京本社ビルだ。

 手がけたのは梅田スカイビルや札幌ドームで知られる建築家、原広司さん(83)。「伝統集落のオーバーレイ(重ね合わせ)を形にしたかったんです」

 原さんは約40カ国での調査研究を経て、一見雑然と重なり合って見える集落の住居群が、じつは緩やかな秩序に従い、全体が調和していると気づいた。オフィスビルにこれを表現するため、正面から奥へ、形が違う12の層を地面に垂直に重ねた。

 内部も「集落」らしさを秘める。数多い部屋の中は、それぞれ異なる装飾。室内からも自然の変化や風景を感じられるよう、窓ガラスには見える風景によって違うエッチング模様が施された。

 4階以上の外壁はアルミパネルを使った。「光に敏感に反応し、外界の変化を伝えるのに適した素材」で、刻々と変わる自然の表情を増幅する建築を目指した。

 原さんはこの作品で建築界に感銘を与えたとして、第1回村野藤吾賞を受けた。

 同社IR経営企画室長の川島祐二さん(53)は、このビルで働きたくて同社を志望したと話す。「アパレルらしい、おしゃれで遊び心がある職場が誇り」と満面の笑みを見せた。

(陣代雅子)

 DATA

  設計:原広司+アトリエ・ファイ建築研究所
  階数:地上9階、塔屋1階
  用途:事務所
  完成:1986年12月

 《最寄り駅》 平和島


建モノがたり

 約10万5千平方メートルの広さを誇る平和の森公園(問い合わせは03・3766・1607)。園内にはフィールドアスレチックコース、テニスコート、弓道場、アーチェリー場(いずれも有料)などがある。新型コロナ感染拡大防止のため、当面の間は利用中止。

(2020年4月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)