木の優しい香りに包まれたホール。天井を見上げると、角材が連なって見える。どんな作りになっているの?
かつて貯木場を丸太が埋めた東京・新木場。東京木材問屋協同組合事務所などが入る木材会館はそんな「木材の町」にふさわしく、ビルの内外に9種類、1千立方メートル超の国産材が使われている。
中でも、ヒノキを多く使ったのが最上階のホールだ。両側の全面ガラス窓からの眺望に加え、圧巻は天井に走る大梁12本。凹凸のある意匠に、木材の表情が際立つ。
長い梁の材料は通常、板を貼り合わせた集成材だが、この大梁は無垢の角材をつないで全長32メートルに仕上げた。設計チームを率いた日建設計の山梨知彦さん(59)は「日本家屋で使われてきた懐かしさ」とその魅力を話す。約12センチ角、長さ4メートルの規格品約4600本を用いた。同社として前例のないスケールに、実物大の試作品で強度実験も行った。
角材は切り込みを入れ、パズルのように組む伝統的な手法などで縦横に連結されている。接着剤を使わないため、補修が必要になれば交換も可能。切削加工にコンピューターを導入して高速化が実現したという。「法隆寺の時代から続く木材利用の知恵を、現代のオフィスビルに取り入れた」
同組合の渡辺昭理事長(78)は「規格品の角材や伝統技術を使った挑戦に心躍った」と振り返る。会館には毎年2千人ほどが見学に訪れ、その半数が建築関係者という。「木材利用を避けてきた都市建築に新たな可能性を開く、革新的な建物です」
(木谷恵吏)
DATA 設計:日建設計 《最寄り駅》 新木場 |
新木場駅を挟んで反対側にある夢の島公園(問い合わせは03・3522・0281)は、ゴミ処理場跡地の43ヘクタールを整備。小笠原諸島の固有種を展示する熱帯植物館、第五福竜丸展示館などがある。施設は臨時休館中。