海辺を歩いていると、全体が赤サビだらけの丸い建物を発見! 何年もここに立っているの? 中には入れるのかな?
年季が入って見えるが、完成から10年ほどにしかならない。外装は鉄を主にした合金素材だ。表面はさびているが内部にはこれ以上進行しない。
新築に見えない姿に、地元では当時「いつ完成するんですか」といぶかる人もいたという。設計した遠藤秀平さん(60)は、「その違和感が、いつ来るか分からない災害を日常的に意識させるはずだ」と話す。
淡路島南部の福良港は、対岸に四国を望む良港。半面、地区は昭和南海地震で津波被害を受け、南海トラフ巨大地震では県内最大規模の被害が予想される。
津波時の緊急避難場所、水門などの施設制御室、防災学習室などの機能を備えた建物は、円柱を三つつなげたような形。曲面で津波の力を受け流し、高床の下を水が通り抜ける構造だ。
中に入ると、正面の柱に1メートルごとに目盛りが記されている。マグニチュード9の最大クラスの地震で予想される8・1メートルの津波の高さを実感してもらうためだ。学習リーダーの多田秋光さん(65)は、経験していない津波災害を伝える難しさも感じるが、「子どもの顔つきを見たら、納得したなと分かりますよ」と手応えも語る。
外に出ると床下のスペースでくつろぐ人がいた。仕事帰り、ここから海を眺めるのが好きなんだそうだ。風通りもよく気持ちがいい。「これは流されにくい船体構造になっとるんよ」。建物への愛着がうかがえた。
(井上優子、写真も)
DATA 設計:遠藤秀平建築研究所、陶器浩一ほか 《最寄り》 福良バスターミナル |
すぐそばに、同じく遠藤秀平さんが設計したコンクリート造りの劇場淡路人形座(問い合わせは0799・52・0260)がある。国の重要無形民俗文化財の淡路人形浄瑠璃を、出張公演時を除き通年鑑賞できる。(水)休み。予約が望ましい。観覧料、演目は問い合わせを。