ヒノキの香りが漂う図書館。うねるような天井やつり下がる大きな傘に目を奪われる。でも、おしゃれなだけじゃないんだって?
岐阜城がそびえる金華山のふもと、約1・5ヘクタールの敷地に立つ複合文化施設。2階全体を岐阜市立中央図書館が占める。
竹細工のような印象の天井は厚さ2センチ、幅12センチの県産ヒノキ材を何層も重ねてある。使用した木材は丸太約1万7500本分。木材の自然のしなりによる緩やかな曲面が、地元の山並みを思わせる。
壁を極力減らした80×90メートルの大フロア。直径8~14メートルの計11個の傘がつり下げられ、それぞれの下に受付カウンター、親子のコーナー、閲覧席などがある。書架は傘を中心に渦巻くように配置され、目当ての本が探しやすい。
設計した伊東豊雄さん(79)がイメージしたのは「大きな家と小さな家」。昔の日本家屋のように、建物の内と外を完全に分けず連続させた環境のほうが楽しいし、省エネルギーにもつながると考えるからだ。大きい空間に、閉鎖的にならず居心地のよい小空間をどう実現するか。検討を重ねた末思いついたのがクラゲのような大きな傘だった。
ポリエステル製の傘の下では、天窓から差す光に柔らかく包まれる。天窓を開ければ傘に沿って空気が流れ、換気や空調が効率的に行える。設計段階の模型を見た小学生の「広い図書館の中で目印がほしい」という声に応え、すべて異なる柄をつけた。
「公共建築は、決まった目的がなくても訪れられる場を意識している」という伊東さん。ふらりと散策するもよし、腰を落ち着けてもよし。誰にも居場所がある、森のような空間だ。
(高木彩情、写真も)
DATA 設計:伊東豊雄建築設計事務所 階数:地上2階、地下1階 《最寄り》 岐阜駅からバス |
徒歩3分のアンノンティーハウス(問い合わせは058・266・7218)は、街角に本棚を置く「ぎふまちライブラリー」に参加する。旅先で紅茶に出会った店主の西願将也さんが、旅やスパイスの本、絵本などを店内に並べる。メディアコスモス建設を知って店の場所を決めたという。午前11時半~午後6時。月曜日休み。