白く波打つような壁面が美しいビル。全体を覆うすだれのようなものは何? 何か意味があるの?
白金台交差点から緩やかなカーブを描く通称「プラチナ通り」。イチョウ並木沿いにおしゃれなカフェ、ショップが立ち並ぶ。その角地に立ち、存在感がある白亜の建物だが、設計した建築家の松岡拓公雄さん(68)は「洗練された街の品位を損なわないようなつくりを心がけた」と振り返る。
目を引くすだれ状のものは最長20メートル以上あるガラス板。外からの視線を適度に遮る、いわばブラインドだ。建物の窓が隠れるよう縦2メートル、横1・3メートルの合わせガラスの四隅を特殊なボルトで連結する方法で、4~11枚つなげている。ピンと張ったステンレス製のワイヤロープを上下に取り付け、パイプで建物本体に固定することで、20年以上たった今でも風圧や振動に耐える強度を保つ。
近くで見るとガラス一面に細かく白い縦じま模様が施されている。ガラスなのに「すだれらしさ」を感じるのはこのためか。一列一列の向きは曲面を描く壁に沿うように少しずつ違い、映り込む景色の表情が豊かに見える。
内部で特徴的なのはエントランスから続く、ベルギーワッフルのような凹凸のある天井。鉄骨をコンクリートで覆った梁を格子状に配置してある。柱を少なくできる上、天井が高く感じられ、広々とした空間を作り出した。梁の裏側に間接照明を埋め込み、オフィスビルには珍しいやわらかい雰囲気を生んでいる。
松岡さんは思わぬところにも遊び心を潜ませた。当初の建築主が音楽事業を手がける会社だったことから、上空から見た建物はグランドピアノの形になっている。「通りに面して波形にしたら、偶然おもしろいものができた。街の景観にもなじんだ成功事例だね」
(陣代雅子)
DATA 設計:アーキテクトファイブ 階数:地上7階、地下1階、塔屋2階 《最寄り駅》 白金台 |
同ビルに隣接する国立科学博物館附属自然教育園(問い合わせは03・3441・7176)は、コナラ、ケヤキなどの落葉樹、スダジイ、マツなどの常緑樹が見られる約20万平方メートルの森林緑地。四季折々の草花や、昆虫などの生きものが身近に観察できる。320円。原則(月)休み。