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大阪ガス実験集合住宅 NEXT21(大阪市天王寺区)

暮らしながら 「未来」探る

建物全体を約1千平方メートルの植栽が覆う。季節ごとに約20種の野鳥が飛来、昆虫や小動物のすみかにもなっている
建物全体を約1千平方メートルの植栽が覆う。季節ごとに約20種の野鳥が飛来、昆虫や小動物のすみかにもなっている
建物全体を約1千平方メートルの植栽が覆う。季節ごとに約20種の野鳥が飛来、昆虫や小動物のすみかにもなっている 全体を一つの街と見なし、廊下や階段などは「立体街路」と呼んでいる

 大阪城近くの住宅街に立つ不思議な名前の建物は、大阪ガスが「未来を試す場」として造った集合住宅だ。それぞれ実験テーマに沿って設計された住戸に、応募して選ばれた社員ら13世帯が住む。

 「エネルギー会社として未来型の暮らしを示す必要がある」と、1990年に計画開始。少子高齢化や家族の多様化に対応した住まい方、オールガス化や水素燃料電池などのエネルギーシステム、キッチンや浴室設備などの実験を、実際に暮らしながら行ってきた。各世帯の居住期間は約5年。居住中も実験に必要な設備改修などを随時行っている。

 約30年間で、のべ18回の改修があった。これが可能だったのは、建物の構造と内装・設備を別々に造る「スケルトン・インフィル方式」を採用したからだ。「丈夫な骨組みを造り、住まい手に合わせて内装を造り替える、ヨーロッパで生まれた手法。NEXT21は外壁の位置まで動かせます」。設計者の一人で、今も建物全体を統括する近角(ちか・ずみ)真一さん(74)は語る。配管スペースが共用部に多く設けられているため、水回りの位置変更も容易だ。

 2月に入居したばかりの高橋由佳さん(35)夫婦が住むのは、「共に暮らしたい人たちが、自在に住める家」がコンセプトの住戸。「土間」をはさんだ居住空間を、住む人や生活スタイルに合わせて分離・結合できる。15年後や30年後、世帯状況が変化すれば隣戸も含めて再編成できるよう設計されている。「人や生活が変われば、家の形も変えられる。まさに未来の暮らし」と高橋さんは話した。


(永井美帆、写真も)

 DATA

  設計:大阪ガス NEXT21建設委員会
  階数:地上6階、地下1階
  用途:共同住宅
  完成:1993年

 《最寄り駅》 谷町六丁目


建モノがたり

  徒歩約10分の空堀(から・ほり)商店街には近年、長屋を改装した飲食店や雑貨店などが続々とオープン。古民家を利用した複合商業施設「練(れん)」は母屋と蔵、表門が国の登録有形文化財で、カフェやレンタサイクル、着付けの店など14店舗が入る。[前]11時~[後]7時(店舗により異なる)。原則[水]休み。問い合わせは京利(078・811・4405)

(2021年4月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)