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ロバハウス(東京都立川市)

洞窟をイメージ 楽団の「巣」

珪藻土(けいそうど)を使った外壁は光を柔らかく反射し、ぬくもりあるたたずまいに。窓からは玉川上水の借景を味わえる
珪藻土(けいそうど)を使った外壁は光を柔らかく反射し、ぬくもりあるたたずまいに。窓からは玉川上水の借景を味わえる
珪藻土(けいそうど)を使った外壁は光を柔らかく反射し、ぬくもりあるたたずまいに。窓からは玉川上水の借景を味わえる 玄関を入ると、そのまま地下のホールを見下ろせる。壁面には松本さんが20代のころから集めた古楽器がずらりと並ぶ

緑豊かな玉川上水の目の前に、おとぎ話に出てくるような建物。どんな人が何をする所?

 中世・ルネサンス音楽を演奏する「カテリーナ古楽合奏団」と、子どもたちに音楽を届ける「ロバの音楽座」のリーダー・松本雅隆(がりゅう)さん(68)は結成から数年後、稽古場が欲しいと思うようになった。

 思い描いたのは「木枠の窓の、自然の中に溶け込むような建物」。しかし相談した工務店は「そんなことできる大工は今いないよ」とつれない返事。

 ある時、演奏旅行で訪れた幼稚園の建物が気に入った。手がけた建築家が村山雄一(たけかず)さん(75)だった。

 連絡をとると村山さんは「できるよ」と即答。

 「新聞紙を丸めたり破ったりして、音の出るものは何でも楽器にするロバの音楽座の自由な発想が気に入って。もの作りの姿勢として共鳴し合ったのかも」

 松本さんは「洞窟や胎内のようなイメージで」とだけ伝え、あとは村山さんの感性に委ねることにした。

 約10平方メートルの建築可能面積に、稽古場(地下)と住居が入る。

 住居スペースに棚がほしいと頼むと、「『生活面のことより、空間をどう生かすかが大事だ』と。寝室やリビングといった決められた場所がなく、子どもたちと『今日はここで寝よう』というように、工夫して使っていましたね」と松本さんは懐かしむ。

 建設中、興味を持った近所の人と言葉を交わしたのがきっかけで、月1回はコンサートを行うことにした。詩人の谷川俊太郎さんや様々なアーティストを招いたライブやワークショップも開催する。

 長い演奏旅行から戻ると「自分たちの巣」と感じる、と松本さん。

 外に向けて手を開いているようなドアの作りなど、好きな部分を挙げるときりがないが、「この空間で音楽に向き合えることが一番うれしい」と話す。


(片山知愛、写真も)

 DATA

  設計:村山建築設計事務所
  階数:地下1階、地上2階
  用途:コンサートホール、稽古場、住居
  完成:1992年

 《最寄り駅》 玉川上水


建モノがたり

 隣接する「ロバノコハウス」も村山さんの設計。2階は空想楽器の博物館や、谷川俊太郎さんの書斎を再現したギャラリースペース。1階ではのみの市やフードカフェを開くことも。コンサートのある日のみオープン。問い合わせは042・536・7266。

(2021年8月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)