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建モノがたり

福生市庁舎

市民が親しむ「丘」 庁舎の主役に

  • 向かい合う二つの棟は2階から5階だけが見えている。広場はなだらかな斜面で、対角の2カ所から上ることが出来る
  • 広場の地面に点々と開いた窓。昼は1階の採光に役立ち、夜は広場を足元から照らす

斜面から突き出たような市庁舎。訪れる市民の出入りがあまり見えないのだけど、なぜ?

 芝生の広場をはさんで立つ、双子のような建物。福生市役所、市議会が入る2棟は2階レベルの広場の下でつながっていて、1階がメイン入り口や総合窓口があるワンフロアの大空間、地下は駐車場になっている。

 設計した山本理顕さんは「むしろ丘を提案したんですよ、市民が自由に使えるような」と話す。その言葉通り、毎年8月の福生七夕まつりでは「丘の広場」で催しが行われ、多くの市民が集う(昨年、今年は中止)。コロナ禍以前は散歩の保育園児や、犬を連れた市民らが訪れた。

 転出入の手続きなど市民生活にかかわりの深い部署は、1階に集約されている。市民は間仕切りのないフロアの窓口を訪れれば、関係部署の職員が入れ替わりやってきて、必要な手続きはワンストップで完了する。同市施設公園課長の田村道生さんは「この変化が一番大きいですね」と話す。

 山本さんの計画の基本には「大きく見えない建物を」という発想もあった。「周囲に高層建築とかない場所。役所ばかりえばっているようなのはね……」。2棟に分けたのもそれが理由で、さらに角を丸めて優しい印象にした。

 窓が等間隔に並ぶメッシュ状のデザインは、防音対策に配慮した結果でもある。横田基地が近いため、当初の全面ガラス案から小さめの窓へと変更、そのぶん数を増やした。

 契約管財課長の田倉宏一さんは「完成当時は、建築を学ぶ学生が見学に来ました。就活で市役所を訪れる学生にとっても、強く印象に残るのではないかと思います」。


(伊東哉子、写真も)

 DATA

  設計:山本理顕設計工場
  階数:地下1階、地上5階
  用途:市庁舎
  完成:2008年

 《最寄り駅》 福生


建モノがたり

 福生市内にある石川酒造(問い合わせは042・553・0100)は創業約160年。自社の敷地にわく地下天然水を使った地酒「多満自慢」、地ビール「多摩の恵」を醸造する。現在は感染予防のため休止中だが酒蔵見学もできる。直売店やイタリアンレストランを併設。

(2021年9月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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