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マルホンまきあーとテラス(宮城県石巻市)

「楽しい町」に文化拠点再生

「マルホン」は命名権を取得した地元企業名から、石巻の「まき」とアートを取り入れた「まきあーとテラス」は公募で決定した
「マルホン」は命名権を取得した地元企業名から、石巻の「まき」とアートを取り入れた「まきあーとテラス」は公募で決定した
「マルホン」は命名権を取得した地元企業名から、石巻の「まき」とアートを取り入れた「まきあーとテラス」は公募で決定した 窓越しに見える山の緑は絵画のよう。「石巻の風景の美しさを再確認してもらえれば」と藤本さん ©Masaki Iwata+Sou Fujimoto Architects

山並みを背に、白い三角屋根が連なる。絵本の世界から飛び出してきたような建物は何?

 東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市。博物館と美術館などを兼ねた文化センター、大ホールがあった市民会館も津波に直撃され取り壊された。2施設の機能に研修室やギャラリーなども加えた複合施設として今年オープンしたのがマルホンまきあーとテラスだ。

 「楽しい町ができた、という印象を与えたかった」。設計者の藤本壮介さん(50)は語る。沿岸部などにあった旧施設と比べ、建設地の周囲は町のにぎわいから遠い。三角屋根や塔屋が連なる形は、わざわざでも足を運びたくなる風景をめざして考え出された。市内を流れる川岸にはかつて三角屋根の倉庫群があったことを知り、それも参考にしたという。

 白い外観は季節や天候に応じた表情の変化をねらった。「朝はピンク、夕方はオレンジ、晴れた日は青く」。ホールでのイベントは夜の開催が多いため、「遠くから明るく照らされた姿が見えるのもいい」。無機質になりすぎず、巨大な面の圧迫感が出ないよう実際は3色を使用。壁には雨水が流れやすいよう金属板を縦に張り、汚れがつきにくい工夫をしている。

 正面中央から中に入ると、左右に直線のロビーが伸びる。長さ約160メートル。ロビーに面して棟割り式に展示室や大小ホール、楽屋スペースが並ぶ。街灯のような照明や店の看板ふうの案内板、不規則な天井の高低差や壁の凹凸。大規模な建築の中ではなく、身近な街角にいる気がする。

 施設を管理する市教委生涯学習課の職員は、「ロビーなどには利用者の心を弾ませる仕掛けがたくさん詰め込まれている。地域の活力を高める施設になればと思う」と話した。

(高田倫子、写真も)

 DATA

  設計:藤本壮介建築設計事務所
  用途:博物館、劇場、市民ギャラリー、和室、研修室ほか
  完成:2021年

 《最寄り》 石巻駅からバス


建モノがたり

 施設内の石巻市博物館(問い合わせは0225・98・4831)は、今月3日にオープンしたばかり。同市出身の彫刻家と版画家の親子による「高橋英吉・幸子父娘(おやこ)展」を12月26日(日)まで開催中。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)、月(祝日の場合は翌日)、年末年始休み。

(2021年11月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)