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岐阜県立森林文化アカデミーの自力建設(岐阜県美濃市)

木造建築「まずつくってみる」

滝口さんら1期生が建てた「森の中の四寸傘」。山道沿いの少し開けた場所にある
滝口さんら1期生が建てた「森の中の四寸傘」。山道沿いの少し開けた場所にある
滝口さんら1期生が建てた「森の中の四寸傘」。山道沿いの少し開けた場所にある 昨年度入学の杉山さんが増改築中の「みどりのアトリエ」。家具はアカデミーの木工専攻学生と協力して制作した

岐阜市中心部からバスで約1時間の山中に点在する建造物。毎年一つずつ増えていくというけれど、誰が何のために?

 森や木に関わる人材育成のため2001年に開校した2年制の専修学校、岐阜県立森林文化アカデミー。木造建築専攻の学生が入学後まもなく取り組むのが「自力建設」だ。

 1学年数人の学生が中心となって6畳程度、予算150万円以内の条件で木造建築を設計、施工する。建築の知識がなく入学する学生もいるが「知識から入るより、まずやってみることで深い学びにつながる」と松井匠先生(40)は話す。

 東京の設計事務所を辞め、1期生として入学した滝口泰弘さん(48)らが建てたのは「森の中の四寸傘」。柱や梁に4寸(12センチ)角の木材だけを使った休憩小屋だ。

 「おちょこ」になった傘のように、屋根の中心部が低くなっている。さらに1カ所へ向けて傾斜をつけ、地上に置いたドラム缶に雨水を集める。水場から遠く貴重な雨水を、山火事防止などに役立てる工夫だ。「何年もつか不安だった」というが、後輩たちのメンテナンスにより、地域の自主保育グループの拠点として使われている。

 現在は神奈川県で設計事務所を主宰する滝口さんは「木造を一から学ぶことができた。コンクリートと違い、木を知らないとできないのが難しいが、面白い」と話す。

 昨年度入学者の木造建築専攻は杉山優真さん(23)だけだった。08年度の自力建設を主に一人でワークスペースに増改築する作業は、コロナ禍もあって今も続いている。

 大学で林業を学び、卒業後すぐアカデミーに入った。平均年齢が30代半ばのアカデミーでは、同世代からは得られない視点も見つかるという。卒業後は岐阜県内の建設会社への就職が決まった。

(高木彩情、写真も)


建モノがたり

 徒歩約15分の「うだつの上がる町並み」は、江戸~明治の商家が軒を連ねる伝統的建造物群保存地区。「うだつ」は屋根の両端を高くした防火壁で、裕福な家しか造れなかった。30日まで美濃和紙あかりアート作品を並べるイベントを開催中。問い合わせは美濃市観光案内所(0575・29・8008)。

(2021年11月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)