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クアパーク長湯(大分県竹田市)

運動楽しむ温泉 構造の美

水着着用で利用する運動浴場。半屋外の歩行湯へ続く。午前10時~午後8時半(内湯は9時半まで。入場は30分前まで)。12月は8、9、15、16日休み
水着着用で利用する運動浴場。半屋外の歩行湯へ続く。午前10時~午後8時半(内湯は9時半まで。入場は30分前まで)。12月は8、9、15、16日休み
水着着用で利用する運動浴場。半屋外の歩行湯へ続く。午前10時~午後8時半(内湯は9時半まで。入場は30分前まで)。12月は8、9、15、16日休み 木材をふんだんに使ったクアハウスの正面入り口

清流・芹川沿いに浴場施設が点在する長湯温泉。白く平たい屋根、ウロコのような模様の壁が目を引く建物は何?

 クアパーク長湯は、長湯温泉特有の炭酸泉を利用した健康増進施設。水着着用で体を動かす運動浴場などがあるクアハウスを中心に、コテージ風ホテルやレストランも備える。

 全体設計を手掛けた建築家・坂(ばん)茂さん(64)は「何度も訪れたくなる開放感ある空間にしたかった」と話す。

 目玉となる歩行湯は、屋内で行ったり来たりするのではつまらない、と屋根だけを架け渡した半屋外式を提案した。川沿いの景色を眺めながら歩く往復約100メートル、途中に2カ所の露天風呂や寝湯がある。

 歩行湯の起点となるクアハウスは、竹かごを思わせる天井がユニークだ。直径9センチ、長さ1.8メートルの丸太同士が支え合い、釣り合いを保つ「レシプロカル構造」。井桁に組んだ4本の重ね方によって、へこんだりふくらんだり平面になったり。緩やかに波打つ屋根となった。「凹凸があるほうが構造的に安定するし、空間に流れができる」と坂さん。

 天井に使用した丸太は、原木からベニヤ板を「カツラむき」した後に残った芯の部分。以前から建材に使えないかと考えていたという。

 逆三角形の連続が印象的な壁は耐震性を考慮した形状だ。「構造が備わっているものはデザインも美しくなります」

 坂さんといえば紙管を使った建築で知られるが、クアパークでもホテルやレストランの随所に使われている。ドイツの建築様式を取り入れた「温泉療養文化館 御前湯」や、藤森照信さんが手掛けた「ラムネ温泉館」とともに、長湯温泉の建築名所となっている。

(斉藤由夏、写真も)

 DATA

  設計:坂茂建築設計
  階数:地上2階(クアハウス)
  用途:温浴施設(同)
  完成:2019年

 《最寄り》 豊後竹田駅から車で約20分


建モノがたり

 県道沿いに車で15分の小津留湧水(おづるゆうすい)は毎分約4トンのわき水があり、24時間無料で持ち帰りできる。併設の水の駅おづる(問い合わせは0974・64・7277)では新鮮な地元野菜を販売。午前8時~午後6時。不定休、年末年始休み。

(2021年11月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)