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六町(ろくちょう)ミュージアム・フローラ(東京都足立区)

新しい物語 内側から生み出す

緑の斜面に面した「箱」は多目的室。個展を開いたり、カフェのように使ったりできる
緑の斜面に面した「箱」は多目的室。個展を開いたり、カフェのように使ったりできる
緑の斜面に面した「箱」は多目的室。個展を開いたり、カフェのように使ったりできる 中の様子が見えないため、オープン前は工場と勘違いする人もいた。「実は足元の窓から少しだけ中をうかがえるのが肝です」と横河さん。[前]11時~[後]5時(入館は30分前まで)。[日][月](夏季は[火]も)、年末年始、展示替え期間休み。詳しくはHPを参照。

中央がくぼんだ白い壁と、巨大段ボール箱のような直方体。中の様子がうかがえないこの建物は何?

 「足立区で、文化に触れることのできる場所をつくりたい」。六町ミュージアム・フローラは、創業90年近い建設会社を区内で営む白谷武一(しら・たに・たけ・いち)さんが60代になって計画を始め、思いを実現した私設美術館だ。江戸絵画や近現代の日本絵画を中心に四季に合わせて展示する。

 設計した建築家の横河健(よこ・がわ・けん)さんは当初、「ちょっと途方に暮れた」。「土地との会話」からイメージをふくらませるのが常だが、建設地の周囲にあるのは、できたばかりのつくばエクスプレス駅のほか更地と碁盤の目状の道路ばかり。

 外側に頼るものがなければ、敷地の中に「新しい物語」を生み出すほかない。コンクリート壁で周りを囲み、水盤と緑化屋根で自然の要素を取り込むことにした。

 白い壁の展示室は上から見て正方形。長方形の水盤がある中庭を囲んで三つの展示室がある。窓がなく落ち着いた展示室と、外光と水面のきらめきがまぶしい中庭の緩急が心地良い。

 中庭に向かってすり鉢状にカーブした展示室の屋根の緑化には苦心した。斜面にのせた土が流れてしまわないよう大手種苗会社に相談、自身の事務所屋上で実験もした。

 開館から10年目。散歩の保育園児が遊びに来たり、区内の小中学校の作品展示を行ったり、地域にじんわり根付いている。白谷さんは「子どもに楽しんでもらえるのがうれしい。何でも思いついたことをできるのが小さい美術館のいいところです」と話した。

(伊東哉子、写真も)

 DATA

  設計:横河健/横河設計工房
  階数:地上2階
  用途:美術館
  完成:2012年

 《最寄り駅》 六町


建モノがたり

 徒歩10分の樹苞(き・ぼう)六町本店(電話090・2342・2653)は北千住の屋台から始まった点心のお店。皮から手作りにこだわり、屋台時代からの看板商品「焼小籠包」は、かむと肉汁があふれる。2種類のギョーザも販売。[前]11時~[後]7時半、[月]([祝]の場合は翌日)休み。

六町ミュージアム・フローラ

http://rokucho-museum.sakura.ne.jp/

(2021年12月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)