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ルピシア滋賀水口工場(滋賀県甲賀市)

大庇の下 働く人のステージ

側面はフランスの伝統色を使いカラフルに。天井に描かれた白い図形は0から3まである搬出入口の番号。一般見学は行っていない
側面はフランスの伝統色を使いカラフルに。天井に描かれた白い図形は0から3まである搬出入口の番号。一般見学は行っていない
側面はフランスの伝統色を使いカラフルに。天井に描かれた白い図形は0から3まである搬出入口の番号。一般見学は行っていない 小高い丘に立っているため、2階からは360度、遠くの山々を眺められる

旧東海道50番目の宿場だった水口(みなくち)。工業団地の一角に、地面に覆いかぶさるような金属製の大壁面が現れる。この建物は何?

 敷地に入ると、ほのかに茶葉の甘い香りが漂う。全国に約140店を展開する世界のお茶専門店「ルピシア」の滋賀水口工場。東日本大震災を機に、それまで関東の1カ所だけだった製造拠点を西日本にも置くため計画された。

 設計を手がけた古谷誠章(のぶあき)さん(66)は水口博喜社長の高校の同級生で、同社の旗艦店も設計した。当初は事務所の若手に任せることも考えたが、「働く人が幸せだなと感じる工場を」という依頼に「がぜんやる気が出ました」。

 鈍く光る金属の壁面は、原材料や製品を積み下ろしするプラットホームの庇(ひさし)と一体になり、近未来映画のセットのよう。従業員が仕事というパフォーマンスを行う「ひのき舞台」にと意図し、「パートの主婦の方が『ママはここで働いているのよ』と自慢できるステージを考えました」。

 トンネルのような曲面は、厚さ3ミリのアーチ形のアルミパネルを現場で溶接した。長さ85メートルを接ぎ目が目立たず滑らかに仕上げる溶接作業は、古谷さんが信頼する宮城県気仙沼市の鋼材加工会社、高橋工業に依頼した。造船業から始まり、有名ブランドの店舗や美術館建築でも技術力を発揮していた同社は大震災で被災。その後最初の仕事となった。

 異物除去、ブレンド、袋詰めなどの各作業場は品質管理が最優先された環境だが、通路は休憩もできるよう、人が快適な温湿度にした。食堂や会議室がある2階は全面ガラス張りで、窓のない1階と対照的だ。

 工場で働く男性従業員は「目立つので、納入業者さんやタクシー運転手さんがすぐ覚えてくれます。2階は開放感があり、リラックスした気分で食事をしています」と話す。

(吉﨑未希、写真も)

 DATA

  設計:古谷誠章+NASCA
  階数:地上2階
  用途:食品工場
  完成:2012年

 《最寄り》 三雲駅から車


建モノがたり

 車で約6分の臨済宗妙心寺派の大池寺(問い合わせは0748・62・0396)には、小堀遠州作とされる枯山水の蓬?庭園がある。白砂で砂紋を描き、中央には宝船に見立てたサツキの植え込み。後方の2段刈り込みで大波小波を表している。午前9時~午後5時(冬季は4時)。400円、中高生300円、小学生200円。

(2021年12月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)