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狭山の森礼拝堂(埼玉県所沢市)

頭を垂れる気持ちに寄り添う

構造材がそのまま柱、壁となった内部。宗教や宗派を問わず礼拝、法要などが行われる
構造材がそのまま柱、壁となった内部。宗教や宗派を問わず礼拝、法要などが行われる
構造材がそのまま柱、壁となった内部。宗教や宗派を問わず礼拝、法要などが行われる 地面まで届く屋根を覆うアルミ板はこけむして、いぶし銀のよう

いぶし銀のウロコをまとったようないくつもの三角屋根。木立に囲まれたこの建物は何?

 東京都の「水がめ」を望む狭山湖畔霊園。木立の中に立つ礼拝堂を設計した中村拓志さんは「主役は自然。そっと森にたたずむ建築をイメージした」と話す。

 大木の枝葉を邪魔しないような鋭角の屋根は、2本の柱を互いに立てかける合掌造りを応用した構造だ。カラマツ材の逆V形を並べた切り妻屋根を五つ、放射状に連結し、あらゆる方向からの力に耐える形状とした。

 中心の木組みは許容誤差1㍉以内という難工事だった。「現場監督が、二度とつくれないと話していました」と霊園の横山毅所長は振り返る。

 木に取り囲まれる場所だけに、樹液による屋根の汚れは課題だった。樹液が付いてもかえって「味」になり、なおかつ急勾配に適した素材を求め、軽く耐久性にすぐれたアルミ板ぶきに行き着いた。

 18センチ×20センチのアルミ板を埼玉県川口市の鋳物工房に特注、複雑な形に合わせて現場で加工できるよう、強度を保つ範囲で最も薄い4ミリの厚さにした。施工時は2万枚以上の板にそれぞれ番号をつけ、設計図通りに重ねていった。

 内部は、木組みの構造そのままの壁や柱が頭上へ向けて先細る。空間が狭くなることを当初心配したという中村さんだが、考えが変わった。「故人や先祖を敬い、頭を垂れ手を合わせる動作や気持ちが自然に生まれるのでは」

 床にはったスレートの石目も祭壇へと集められ、さらに床面も祭壇に向けてごくわずか傾斜している。「訪れた人の気持ちに寄り添えれば、気づかれなくていいのです」

(鈴木麻純、写真も)

 DATA

  設計:中村拓志&NAP建築設計事務所
  階数:地上1階、地下1階
  用途:礼拝堂
  完成:2014年

 《最寄り駅》 西武球場前


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(2022年3月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)