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コミュニティセンター進修館(埼玉県宮代町)

「地域の中心に」夢詰め込んだ

円形の広場を囲むように立つ。町特産の巨峰ブドウにちなんだ外壁の色は、時刻や方角によって微妙に見え方が違うという
円形の広場を囲むように立つ。町特産の巨峰ブドウにちなんだ外壁の色は、時刻や方角によって微妙に見え方が違うという
円形の広場を囲むように立つ。町特産の巨峰ブドウにちなんだ外壁の色は、時刻や方角によって微妙に見え方が違うという 連続したアーチが伝統的な西洋建築を思わせる半屋外のコロネード(回廊)

駅から動物公園へ向かう途中に現れる、すりばち状の芝生の広場と円形劇場のような建物。ここは何?

 人口3万4千人、埼玉県東部の宮代町。役場の隣に立つ進修館はトップライトの吹き抜けや連続アーチの美しい回廊、レトロモダンな窓や階段といった個性的な空間が、アニメの人物に扮し写真を撮り合う「コスプレイヤー」に人気だ。

 もちろん地域のコミュニティセンターの役割も大きく、大小ホールや集会室、食堂などが町民の様々な活動に利用されている。

 「地域の中心となる、世界のどこにもないような空間を」というのが、町誕生から1982年まで町長を務めた故斎藤甲馬氏の依頼だった。富田玲子さん(83)は設計を担当した象設計集団の一人。当時20~30代の同僚らと手探りで計画を練った。「こんなスペースがほしいとか、みんなの夢みたいなアイデアが詰まっている」と目を細める。

 建物の通路は広場の中心から見て放射状に延び、芝生側と反対側などに計11カ所の出入り口がある。「どこからでも入れ、そのときの気分で選べる居場所がある」。館を訪れるたびに富田さんが「いいな」と感じるところだ。

 町外からの利用も歓迎で、結婚式場に使われることもある。スタッフの渡邉朋子さん(52)の印象に残るのは、ある県外のカップル。「せっかくだから町の人たちにも祝福してほしいと言ってくれて」、町内の事業者に引き出物やケーキを発注。地元幼稚園児らが歌を歌い、一緒に楽しんだという。「建物をきっかけに、住んでいる人が町を好きになって町のことを考える、そんな循環が作れたらいい」と渡邉さんは話す。

 40年以上の歳月を感じさせるものの、手入れの行き届いた館内外。取材の日も芝生を駆け回る子供たちや、ロビーで将棋を指す高齢者らでにぎわっていた。

(宮嶋麻里子、写真も)

 DATA

  設計:象設計集団
  階数:地上2階
  用途:集会施設
  完成:1980年

 《最寄り駅》 東武動物公園


建モノがたり

 徒歩約18分、日本工業大学内の工業技術博物館(問い合わせは0480・33・7545)は、産業発展に寄与した明治から昭和の工作機械などを動く状態で保存・展示している。人気はキャンパス内を走る本物の蒸気機関車(運行日は問い合わせを)。午前9時半~午後4時半(入館は4時まで)。無料。原則(日)(祝)、8月中~下旬、年末年始休み。

(2022年4月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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