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東京カテドラル聖マリア大聖堂(東京都文京区)

弱点解消 「完成形」に近づいた

十字の天窓から光が差す内部。カテドラルとは、司教座「カテドラ」(中央の赤い椅子)のある教会を指す
十字の天窓から光が差す内部。カテドラルとは、司教座「カテドラ」(中央の赤い椅子)のある教会を指す
十字の天窓から光が差す内部。カテドラルとは、司教座「カテドラ」(中央の赤い椅子)のある教会を指す 大聖堂(左)の高さは40㍍、鐘の塔(右)はさらに20㍍高い。「(大司教区側にも)最初から現代的な教会をという思いがあったようです」と東京大司教区広報の赤井悠蔵さん(42)

 上空から見ると巨大な十字架。築60年近い大聖堂が、大がかりな改修で解消した〝泣きどころ〟とは。

 東京カテドラル聖マリア大聖堂は、日本を代表する建築家・丹下健三(1913~2005)の代表作の一つ。鉄筋コンクリート造でステンレス製の外装をまとう曲面8枚の組み合わせで主要部が構成されている。

 中央が細く高みに向かい、斬新でありながらカトリック教会の伝統も踏まえたデザインはコンペで選ばれた。友好関係にあるドイツ・ケルン教区の支援や非信徒を含む国内からの寄付も資金として建設された。

 時を経て、深刻な問題となったのが雨漏りだった。

 外壁を覆うステンレスの接ぎ目から雨水が浸入し、鉄骨の下地の一部が腐食した。ステンレス板を固定するボルトが劣化し、台風などの強風で板がはがれる事態も生じた。

 「オリジナルデザインを踏襲しながら防水性能をどう高めるかが課題だった」と06~07年の改修で技術監修をした丹下都市建築設計の丹下憲孝さん(64)。既存の下地鉄骨をすべて撤去し、さびに強いめっき加工の鉄骨に交換、軀体(くたい)全体には塗布防水を施した。下地に木材をセメントで圧縮成型した板、ゴムとアスファルトを用いた防水シートを張り、二重の防水に。

 ステンレスはより耐候性の高い種類を採用した。従来のものよりやや光沢が少なく色調も微妙に異なるため、「明るく軽快な光沢感が変わってしまうとためらった」。が、建設当時を知る元設計監理担当者は「こちらのほうが丹下先生のイメージしたものに近い」。「当時の技術で実現できなかったものを、より完成形に近づける機会にもなった」と丹下さんはいう。

 漏水対策でアクリル製のカバーが取り付けられていた十字の天窓も改修した。鉄骨にめっきを施し、新たにアルミサッシを設置。祭壇の十字架を神々しく照らす光が明るさを増した。

(吉﨑未希、写真も)

 DATA

  設計:丹下健三+都市・建築設計研究所
  改修設計:大成建設
  階数:地下1階、地上1階
  用途:教会
  完成:1964年

 《最寄り駅》江戸川橋


建モノがたり

  目白通りを挟んで徒歩3分のグリーンショップ 音ノ葉(午前10時~午後6時、☎03・3942・0108)はカフェ(9時半~9時、☎03・3942・1077)を併設する園芸店。カフェでは自社農園で栽培する野菜を使った料理などが楽しめる。原則[月]休み。

(2022年7月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)