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神戸ポートミュージアム(兵庫県神戸市)

海と山のコンクリートが層に

2~4階の水族館「アトア」は光や映像、アートを駆使し非日常を演出。午前10時~午後9時(入場は8時まで)。予約制。無休
2~4階の水族館「アトア」は光や映像、アートを駆使し非日常を演出。午前10時~午後9時(入場は8時まで)。予約制。無休
2~4階の水族館「アトア」は光や映像、アートを駆使し非日常を演出。午前10時~午後9時(入場は8時まで)。予約制。無休 「アトア」の目玉の一つ、直径3メートルの球体水槽。周りのリクライニングチェアでくつろぎながら観賞できる

神戸のウォーターフロントに昨年できた複合文化施設。コンクリートにこだわったというのだが?

 アクアリウム(水族館)、フードホール、ブライダルデスクなどが入る神戸ポートミュージアム。上から見てほぼ楕円形、洞穴のような出入り口以外に目立った開口部がなく、要塞のようだ。

 「奇をてらったわけではなく、自然のままにつくったら、こういう形になりました」。大成建設設計室長の土井健史さん(47)はいう。

 自然のままと言われても……。所在地は神戸港の突堤の根元、少し前まで倉庫が立ち並んでいた場所だ。

 「約100万年前から、隆起する六甲山系と、瀬戸内海の海水面の変化による浸食で神戸の地形はできあがったのです」。そこまで歴史をさかのぼり、大地と水を感じさせる建築を目ざしたと設計担当の原田健介さん(33)。

 コンクリート打ちっ放しの外壁をよく見ると、色みが微妙に異なる層が重なってみえる。「神戸の地層の成り立ちを反映しています」

 地殻変動で何度も海面が上下した神戸では海底に堆積した地層と山から運ばれてできた地層が交互に重なっている。そこで、コンクリートに混ぜる骨材(砂や砂利)を瀬戸内海の島と六甲山中の2カ所から採取、骨材の色によってグレー系、茶系となったコンクリートを階ごとに使い分けた。

 骨材の色を出すため、コンクリート表面を高圧洗浄。「真冬に水浸しになりながら」作業し、地層状の色ムラを実現した。洗浄によりセメント部分が減ったことで塩害への強度も増した。

 屋上や周囲の植栽は野性味のある植物を集めた。「木が生い茂って建物なのか丘なのかわからなくなった状態が完成」と土井さんは考えている。

(宮嶋麻里子、写真も)

 DATA

  設計:大成建設
  階数:地上4階、地下1階
  用途:複合文化施設
  完成:2021年

 《最寄り駅》 三宮駅からバス


建モノがたり

 徒歩約1分の神戸みなと温泉 蓮(れん)(問い合わせは078・381・7000)は、地下1150㍍から湧き出る天然温泉が自慢の旅館。温泉のほか、屋外プールや岩盤浴などの施設があり、日帰りでも利用できる。日帰り温泉入館料は平日2530円((土)(日)(祝)は440円増し)。「アトア」との入館セット券も。営業時間は施設によって異なる。無休。

(2022年7月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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