角のとれた、凹凸のない壁面を、気のむくままに切り取ったような平行四辺形の窓。この形はなぜ生まれた?
デザイン専門大学として、1994年に開学した長岡造形大学。第3アトリエ棟は1年生全員が履修する基礎造形実習の専用アトリエと、陶芸、ガラス工芸、染織などの設備を備えた市民工房がある。
設計の中心となった日本設計の篠﨑淳社長は、開学以来次第に増えていった同大学の施設のほとんどを手がけた。それぞれ構造が異なり、時々のトレンドを反映した建物を、大学側は「すべてデザインの教材」と受け止める。その上で第3アトリエ棟にも「これまでにないもの」という要望が出された。
といって合理性、効率性を無視したデザインは論外と考える篠﨑さん。解答の一つとした平行四辺形の窓は「ちょっとした変形」ながら、採光や眺望に大きな変化をもたらした。「対角線が長いから広く大きく見えるとか、時間帯によって壁に不思議な意匠が浮かぶとか、予想を超えることが起きました」
建物の平面図もほぼ平行四辺形、中央をクレバス(氷河の割れ目)のような吹き抜けが貫く。クレバスを巡る廊下の両側は半階分ずつ段差があり、それぞれに半ば独立、半ば連続する3室が並ぶ。
敷地の条件の中で天井高5㍍のデッサン室を含む必要なスペースを配置したためで、篠﨑さんは「場所の声とか要求サイズとか素直に聴いたら、形が変わったものになった」と話す。直線ではない部屋の配置や、通路と部屋の段差から「気にはならないが互いに気配を感じられる」一体感が生まれた。
馬場省吾学長は、第3アトリエ棟を含むキャンパス内の建築が「大学の魅力になっている」と話す。「見学に来た方には特別な空間に映るようです」
DATA 設計:日本設計 《最寄り駅》 長岡駅からバス |
キャンパス内の展示館「MàRoùの杜」(お問い合わせは0258・21・3321)は長岡市の医師で、画家としても活動した故丸山正三氏の絵画約3千点、習作やスケッチ約8千点を収蔵。作品の展示や、大学の企画展を行う。11月13日(日)まで「美術・工芸学科教員展」を開催中。午前9時~午後4時。月曜日、10月22、23日休み。