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海鮮和食 えんやどっと丸(茨城県大洗町)

太平洋に面した茨城県の大洗海岸。ビーチ近くに立つ、やぐらのような塔は何?

あたりを柔らかく照らす塔と店内の照明。営業は[前]11時~[後]10時。火夜水休み。お問い合わせ先029・267・2278=関口聡撮影
あたりを柔らかく照らす塔と店内の照明。営業は[前]11時~[後]10時。火夜水休み。お問い合わせ先029・267・2278=関口聡撮影
あたりを柔らかく照らす塔と店内の照明。営業は[前]11時~[後]10時。火夜水休み。お問い合わせ先029・267・2278=関口聡撮影 直径160センチの円窓のある小上がり。清水裕久さんは古い寺社のような趣が好きだという=いずれも関口聡撮影

高さ10メートル 人を呼ぶ光の塔

 海水浴、サーフィンや釣りなど通年で楽しめる大洗海岸。「えんやどっと丸」は地元で1907年から続く水産加工業・清水商店が初めて開いた飲食店だ。

 当時の社長で現会長の清水洋治さん(77)、三男で飲食店部門担当の裕久さん(41)らは「どこにでもある店にしたくなかった」。妻で取締役の悦子さん(72)のつてをたどって託したのが、公共施設なども多く手がける建築家の矢田康順さん(68)だった。

 海沿いの大通りに面した建設地の両側にはショッピングモールと科学博物館が立ち、埋没感が心配された。大看板を掲げる代わりに矢田さんが出した答えは高さ10メートル、ヒノキの角材をキャンプファイアのように積み重ねた塔だった。

 幅、奥行きともに2メートル、木組みの間から空が透けてみえる塔は「ポンポン船(蒸気船)」の煙突のイメージ。内部には照明を設置し、夜は「ビーコン(位置を知らせる装置)」として人をひきつける役割を担わせた。

 木造の店内の中心部分は7×14メートルの柱のない空間を確保、ほかより天井を高くした。ぐるりと取り囲むハイサイドライト(高窓)や天井内の間接照明などで、内部は自然光の中にいるように感じられ、外部には行灯(あん・どん)のような柔らかい光を発する。

 窓の高さなどに洋治さんが異論をとなえる場面もあったが、矢田さんは譲らなかった。「すべて計算して設計していたと、最近になって本当によくわかりました」と裕久さん。

 東日本大震災で大洗町は最大4メートルを超す津波が襲い、店も大きな被害を受けた。それでも30日後に再開、塔の明かりは人々を勇気づけた。

(隈部恵)

 DATA

  設計:インテグレーティッド・デザイン・アソシエイツ
  階数:地上1階
  用途:商業施設
  完成:2006年

 《最寄り駅》 大洗


建モノがたり

 車で約5分、太平洋の波が洗う岩礁の上に立つ「神磯の鳥居」は人気の撮影スポット。特に荒波と鳥居越しに昇る朝日が見られる冬は絶景だ。歩いて5分ほどの大洗磯前(いそ・さき)神社(電話029・267・2637)にまつられる神が降り立った場所といわれる。

海鮮和食レストラン えんやどっと丸
https://www.enya-otd.com/

インテグレーティッド・デザイン・アソシエイツ(I.D.A.)
http://www.ida-tokyo.com/

大洗磯前神社
https://www.oarai-isosakijinja.net/

(2022年12月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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