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リボンチャペル(広島県尾道市)

共に支える 2本のらせん階段

周辺の木は極力切らずに残した。夏は茂った葉が日差しを防ぎ、落葉する冬は枝越しの光が明るい
周辺の木は極力切らずに残した。夏は茂った葉が日差しを防ぎ、落葉する冬は枝越しの光が明るい
周辺の木は極力切らずに残した。夏は茂った葉が日差しを防ぎ、落葉する冬は枝越しの光が明るい 堂内の参列者が見守る中、らせん階段から新郎新婦が下りて来て堂内に入る演出も提案

新体操選手が操るリボンのよう。丘の中腹に立つ建物は、いったいどうなっている?

 2本のらせん階段が宙を舞うリボンのような「リボンチャペル」は尾道駅から車で約30分、瀬戸内海を望むリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ尾道」の一角にある。上から下へ時計回りの内側階段と逆回りの外側階段は、高さ約15㍍の頂上付近でつながっている。

 「別々にスタートした2人の人生が、てっぺんでつながるというイメージはすぐに浮かびました」。結婚式用のチャペルの設計を担当した中村拓志さんは話す。1本では不安定ならせん形が2本で安定する構造も「結び合うという結婚の意味と共通する」と考えた。

 礼拝堂は全面ガラス張りの円筒状。祭壇と椅子が並ぶ堂内に入ると、上方で渦を巻きながら空間を取り囲むダイナミックならせんが目を引く。壁や屋根はなく、らせん階段が全体を支える構造になっている。

 総延長約140メートルのらせん形は、高度な技術で曲げ加工した直径約30センチの鋼管2本を土台に、鋼板を溶接した88個のパーツからなる。2、3個ずつつなげ、現場ではジャッキで支えながら下から組み上げた。ジャッキダウンの際に予測される微妙な変形もあらかじめ織り込み、結果的には設計値との誤差は10ミリ以内に収まった。

 鉄の技術を駆使した建物は、古くから造船業が盛んなこの地区の歴史への意識もあったと中村さんは話す。実際、ホテルは海運・造船から始まった企業グループの一つだ。スタッフの下村秀明さんは「造船業が下火になった町を活気づける存在となることを願ってリボンチャペルは誕生した」と説明する。

 チャペルには海外からの問い合わせも多く、週末は半年先まで予約が入っている。「類を見ないチャペルなので。似ているチャペルは一つもありません」。婚礼支配人の杉村大樹さんは胸を張った。

(三品智子、写真も)

 DATA

  設計:中村拓志&NAP建築設計事務所
  階数:地上1階
  用途:礼拝堂
  完成:2013年

 《最寄り駅》 尾道駅から車


建モノがたり

 車で約3分のSOFU PASTA & CAFE(☎084・987・2032)はマリーナに隣接するパスタ専門店。瀬戸内の魚介や契約農家の野菜を使った季節変わりのパスタが楽しめる。瀬戸内生搾りレモンサイダー(770円)など飲み物も充実。午前11時~午後5時(ラストオーダー4時)。10月1日~3月31日は火休み。

(2023年1月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)