森の中に横たわる白い巨大な角形の土管。しかも、直角に2段に積んである。何のための建物?
上から見ると「井」の字に組まれた4本の四角い「土管」。その1本の、ロの字形の断面が入り口。入るとまもなく、約8㍍四方の大空間に迎えられる。
「井」の真ん中部分にあたるリビングダイニング。大きな開口部には高透過ガラスがはめ込まれ、天井は土管2段分の高さがある。床には砂利が敷かれ、屋外と同じ木が育っていて、内と外の区別がつかないほどだ。
「木漏れ日の位置や表情による雰囲気の変化がとても印象的で、何時間も座っていられます」と話すのは、プロダクトデザインや建築で国際的に活躍するデザイナー・佐藤オオキさん(45)。ここは、佐藤さん率いるデザインオフィスnendoの保管庫兼ゲストハウスとしてつくられた。
作品やサンプルのための倉庫が手狭になり、縁のあった軽井沢からほど近いこの土地に保管庫を新設。必要に応じて増設ができるという面から「土管のような建物」をイメージした。
空洞の内寸横約2㍍×縦約2・3㍍の土管は幅約2㍍のパーツ計63個に分けて工場で成形した。上下各7カ所に開けた穴にワイヤを通し、現場で締めて連結。気密性や断熱性を増した。
保管庫として使うのは、1階の長いほうの土管。長さ40㍍の細長い空間に家具や照明器具などの作品が並ぶ。1階には浴室、洗面所、キッチンもしつらえた。書斎、寝室がある2階には、テーブルウェアや花瓶など小さめの作品の保管庫も。
依頼主のない建物だからこそ、失敗を恐れずチャレンジできたと佐藤さんは話す。「こうしたものづくりのアプローチに挑戦していくことで、建築にデザインに多少なりとも貢献できるのでは。今後の仕事に生かせる貴重な機会になった」
(片山知愛、写真も)
DATA 設計・監理:nendo(佐藤オオキ・石林典飛・丸山良太・前田大輔) 《最寄り駅》 軽井沢駅から車 |
nendo 土管のゲストハウス
https://www.nendo.jp/jp/works/culvert_guesthouse/
車で3分の複合施設MMoP(モップ)には、国内外のアート写真を展示する「御代田写真美術館」((前)9時~(後)5時、(水)休み)を中心に、飲食店やインテリア・雑貨店など7店が集まる。「KOICHIRO COFFEE」(お問い合わせは0267・31・0521、(後)2時~8時、(月)~(水)休み)では自家焙煎豆を使ったハンドドリップコーヒー(600円)が味わえる。