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土管のゲストハウス(長野県御代田町)

「井」の字の真ん中 時間忘れて

外壁は白に15%黒を混ぜたライトグレー。左側が保管庫。現在一般公開は行っていない
外壁は白に15%黒を混ぜたライトグレー。左側が保管庫。現在一般公開は行っていない
外壁は白に15%黒を混ぜたライトグレー。左側が保管庫。現在一般公開は行っていない 大きな窓からの眺めが美しいリビングダイニング。室内の樹木のために自動水やり機能を地中に埋設

森の中に横たわる白い巨大な角形の土管。しかも、直角に2段に積んである。何のための建物?

 上から見ると「井」の字に組まれた4本の四角い「土管」。その1本の、ロの字形の断面が入り口。入るとまもなく、約8㍍四方の大空間に迎えられる。

 「井」の真ん中部分にあたるリビングダイニング。大きな開口部には高透過ガラスがはめ込まれ、天井は土管2段分の高さがある。床には砂利が敷かれ、屋外と同じ木が育っていて、内と外の区別がつかないほどだ。

 「木漏れ日の位置や表情による雰囲気の変化がとても印象的で、何時間も座っていられます」と話すのは、プロダクトデザインや建築で国際的に活躍するデザイナー・佐藤オオキさん(45)。ここは、佐藤さん率いるデザインオフィスnendoの保管庫兼ゲストハウスとしてつくられた。

 作品やサンプルのための倉庫が手狭になり、縁のあった軽井沢からほど近いこの土地に保管庫を新設。必要に応じて増設ができるという面から「土管のような建物」をイメージした。

 空洞の内寸横約2㍍×縦約2・3㍍の土管は幅約2㍍のパーツ計63個に分けて工場で成形した。上下各7カ所に開けた穴にワイヤを通し、現場で締めて連結。気密性や断熱性を増した。

 保管庫として使うのは、1階の長いほうの土管。長さ40㍍の細長い空間に家具や照明器具などの作品が並ぶ。1階には浴室、洗面所、キッチンもしつらえた。書斎、寝室がある2階には、テーブルウェアや花瓶など小さめの作品の保管庫も。

 依頼主のない建物だからこそ、失敗を恐れずチャレンジできたと佐藤さんは話す。「こうしたものづくりのアプローチに挑戦していくことで、建築にデザインに多少なりとも貢献できるのでは。今後の仕事に生かせる貴重な機会になった」

(片山知愛、写真も)

 DATA

  設計・監理:nendo(佐藤オオキ・石林典飛・丸山良太・前田大輔)
  階数:地上2階
  用途:保管庫兼ゲストハウス
  完成:2022年

 《最寄り駅》 軽井沢駅から車

  nendo 土管のゲストハウス
  https://www.nendo.jp/jp/works/culvert_guesthouse/


建モノがたり

 車で3分の複合施設MMoP(モップ)には、国内外のアート写真を展示する「御代田写真美術館」((前)9時~(後)5時、(水)休み)を中心に、飲食店やインテリア・雑貨店など7店が集まる。「KOICHIRO COFFEE」(お問い合わせは0267・31・0521、(後)2時~8時、(月)~(水)休み)では自家焙煎豆を使ったハンドドリップコーヒー(600円)が味わえる。

(2023年2月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)