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石切鯛焼き和ノ国(大阪府東大阪市)

最小幅37㌢ すれ違い注意!

横から見ると芝居のセットのよう。平日200個、土日500個限定のたい焼きは粒あん、カスタードなど
横から見ると芝居のセットのよう。平日200個、土日500個限定のたい焼きは粒あん、カスタードなど
横から見ると芝居のセットのよう。平日200個、土日500個限定のたい焼きは粒あん、カスタードなど 奥へ向かって幅が狭くなる調理場。賃料は7万円余り

 真ん丸のたい焼きが評判の、駅前の店。横から見たら薄さにびっくり。何でこうなった?

 Y字路にはさまれ、上から見るとくさび形の建物は先端の幅わずか37㌢。1、2階合わせて20平方㍍足らず。「石切鯛焼き和ノ国」の店内は、2人がすれ違うにもコツがいる。

 2022年1月に店を開いた山崎数斗さん(28)は地元育ち。お百度参りで知られる神社がある町で、自分も好きなたい焼き屋を開こうと決めた。店舗を探すうち出合ったのが、絵本で描かれるような三角屋根のこの物件。以前「薄い建物」としてテレビで取り上げられたのを知っていて、話題性があると思ったことが決め手になった。

 一度に6個焼けるたい焼き器が、表通りを向いて2台並ぶ。振り向いた背後に生地や3種のあんを置く台。ふだんはバイトが2人、かき入れ時は人手を増やしたいが、4人以上になると「狭すぎて身動きができひん」と山崎さん。同じ形の2階は物置として使っている。

 建てたのは、オーナー伊藤良さん(42)の母ヒロミさん。息子2人を育てるシングルマザーで、鉄道整備にあたって譲渡した土地の残り約18平方㍍でブティックを開くためだった。

 表通り側が正面だが、裏側の通りが神社参道への近道。地元の人がよく通るため、商品がよく見えるよう大きなガラス戸にした。しろうとながら自ら図面を引いた母が「好きなように」つくったと良さんは振り返る。

 ヒロミさんは18年に70歳で亡くなり、常連客でにぎわったブティックも店を閉じた。その後一時はダイビングスクールがテナントに入った。「ランドマークみたいな建物。母親が店をやってきた場所でうまくいってはるのはうれしい」

(島貫柚子、写真も)

 DATA

  設計:伊藤ヒロミ
  階数:地上2階
  用途:店舗、事務所
  完成:1989年

 《最寄り》新石切


建モノがたり

 徒歩6分の石切劔箭(つるぎや)神社(問い合わせは072・982・3621)は「でんぼ(腫れ物)の神様」として親しまれ、病気平癒のご利益を求めて参拝者が訪れる。本殿前と神社入り口にある百度石の間を行き来するお百度参りが有名。24時間いつでも参ることができる。

(2023年2月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)