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大阪芸術大学キャラクター造形学科棟(大阪府河南町)

学生の夢 刺激する「お城」

エントランス前の地面に置かれているのはデザインファーニチャー(ソファ)
エントランス前の地面に置かれているのはデザインファーニチャー(ソファ)
エントランス前の地面に置かれているのはデザインファーニチャー(ソファ) 館内フリースペース

おとぎ話の世界に迷い込んだみたい……。ここはどこ? 私はお姫様?

 大阪郊外の大阪芸術大学に2021年秋、お目見えしたキャラクター造形学科棟。「みんな〝お城〟って呼んでますよ」と塚本英邦副理事長は笑う。

 漫画、アニメ、ゲーム、フィギュアアーツを学ぶ同学科の新築校舎を「西洋の城にする」のは、塚本邦彦理事長の鶴の一声で決まった。「夢のある仕事を目指す学生たちなので、非日常的な空間で想像力を豊かにしてほしい、という願いからでしょう」と英邦副理事長が代弁する。

 設計を担当した大成建設設計本部の平井浩之副本部長は以前にも同大の建物を手がけ、理事長の思いを耳にしていた。「いよいよきたか」と受け止め、実務を担当する岡崎啓祐さんらはドイツへ飛んだ。ノイシュバンシュタイン城など数々の城を見てまわり「現代の学校と19世紀以前の城をどう結びつけるか」がポイントと感じた。一方で城といっても「適切なコスト」での施工も求められる。

 岡崎さんがふだん設計するのは機能優先のシンプルなオフィスビル。ギャップに戸惑いながら、教室などの配置を一から検討。塔を設け、その形や位置も本物の城に準ずるなどして城らしさを実現していった。

 モルタル塗装の内壁ははけ目のような凹凸で陰影をつけ、重厚感を演出した。ロウソクの明かりをイメージしてホールなどの照明は抑え気味に。トイレは洗面ボウルも装飾的デザインで、クラシックなホテルのよう。ただ、ホールの周囲に配置した各教室は、個性が強くなりすぎないよう普通の内装だ。

 新校舎お披露目の日、集まった多くの学生が歓声を上げる姿に、岡崎さんは「城のもつ力」を確信したという。同大には映像や美術、写真を学ぶ学生もいる。「ロケ地や被写体として使い放題」と英邦副理事長も胸を張った。

(三品智子、写真も)

 DATA

  設計:大成建設
  階数:地上4階、塔屋1階
  用途:大学校舎
  完成:2021年

 《最寄り駅》 喜志駅からバス


建モノがたり

 車で約10分、史跡公園「近つ飛鳥風土記の丘」に隣接する大阪府立近つ飛鳥博物館(お問い合わせは0721・93・8321)は、府内の古墳から出土した埴輪や石棺などを常設展示する。建物は安藤忠雄設計。午前9時45分~午後5時(展示室入館は10時~4時半)。310円。原則月、年末年始休み、臨時休館日あり。

(2023年3月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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