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モード学園スパイラルタワーズ(愛知県名古屋市)

上昇のエネルギー 三つの翼で

モード学園スパイラルタワーズの外観(西側)
完成時、学園創立者の谷まさるさんは見事な曲線を声もなく見上げていたという
モード学園スパイラルタワーズの外観(西側) モード学園スパイラルタワーズの図書室 モード学園スパイラルタワーズの外観(入り口前) モード学園スパイラルタワーズの学生入り口前 名鉄百貨店本店 ナナちゃん

新幹線が名古屋駅に近づくと目に入る超高層ビル。ロングドレスをまとったような印象的な形は、いったいどういう構造?

 ファッションと美容、IT、医療の3分野の専門学校・専門職大学が入る、モード学園スパイラルタワーズ。学園の創立者、谷まさるさんが希望したのは「3分野の学生のエネルギーを表す形」であり、「四角形ではないビル」だった。

 設計を担当した日建設計の若林亮さん(62)らが示した複数のコンペ案から、類を見ない斬新ならせん形が採用された。「実現可能性よりも自由な発想を優先したものだった」と若林さんは振り返る。

 高さ170㍍のビルの中心を貫くのは、インナートラスチューブと呼ぶ筒状の構造体。25×16㍍の楕円(だえん)の筒の中にエレベーターが配置される。外側に巻き付く3枚のウィングとの間が教室だ。その配置は階ごとに3度ずつずれており、外壁面のひねりを生み出している。

 インナートラスチューブはコンクリートを流し込んだ鉄鋼管を三角形に組み合わせて強度を確保。ウィングには地震エネルギーを効率よく吸収する制振カラムを26カ所に取り付けた。頂上には建物重量の1%の「重し」を設置、揺れを抑える仕組みだ。

 曲線、曲面、三角形を基本とする上、教室やフロアごとにその様相も変化し、内部を歩くと思わぬところで太い柱や斜めの構造物に出くわす。邪魔にならないかと思うが、建設時もかかわった学園管理部の柴田英貴さん(51)は「デザインの一部なので気にならない」と事もなげだ。

 1月に86歳で死去した谷さんは名古屋出身で、1966年に名古屋モード学園を開校した。「誰もやらないことをやれ」が口癖だった。学生に「動いて初めて、ものは美しい」と指導していたといい、「上昇するイメージのらせん形を選んだ理由だと思う」と柴田さんは話した。

(片野美羽、写真も)

 DATA

  設計:日建設計
  階数:地上36階、地下3階、塔屋2階
  用途:学校、店舗
  完成:2008年

 《最寄り駅》 名古屋


建モノがたり

徒歩4分の名鉄百貨店本店メンズ館1階エントランス前にはちょっと変わった〝名所〟がある。身長6.1㍍ある巨大マネキンのナナちゃんで、1973年に設置され4月に50歳を迎えた。一緒に記念撮影をする人や待ち合わせに使う人も多く、駅前の顔として愛されている。☎名鉄百貨店本店本館(052・585・1111)。

(2023年6月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)