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島キッチン(香川県土庄町)

集おう 大きな柿の木の下で

柿の木の舞台を前に、自由に休めるテラス。営業時間前にも涼をとる観光客の姿があった
柿の木の舞台を前に、自由に休めるテラス。営業時間前にも涼をとる観光客の姿があった
柿の木の舞台を前に、自由に休めるテラス。営業時間前にも涼をとる観光客の姿があった オープンキッチンの店内 柿の木を取り巻く日よけ屋根は、4年前ヒノキ板でふき直した 屋根の下、日ざしを避けることができる桟敷 長屋門(右)のあるエントランス 桟敷のある庭から見た舞台(中央)と母屋(左)

高松から船で約40分。住民700人余りの豊島(て・しま)にあり、国内外から多くの人が訪れるレストランとはどんなところ?

 10ほどのカウンター席が取り囲むオープンキッチンで手際よく料理を作るのはエプロン姿の島の女性たち。小鉢やサラダ、特製キーマカレーには島でとれた野菜がふんだんに使われている。

 古民家を活用した「島キッチン」は2010年、第1回瀬戸内国際芸術祭の作品として建てられた。設計した安部良さん(57)が依頼されたのは「建築でもアートでも、地域の人と芸術家を結びつける場」。候補地の中で安部さんの心をとらえたのは、2本の柿の大木がある空き家。近所の人たちが庭に花を植え、自然と集まる場になっていた。

 柿の木を舞台の一部にした野外劇場をイメージした。「どんなパフォーマンスを見せるのがいいかといえば、島のお母さんたちが料理する姿が一番だと思った」

 かつて産業廃棄物の不法投棄事件が起きた島だが、元来は水や作物も豊か。東京・丸ノ内ホテルのシェフらの監修で、新鮮な食材を使ったメニューを練り上げた。

 母屋を取り巻くように縁側を、庭には浮島のような桟敷席を増設。木の葉のような薄い屋根で上部をぐるりと覆った。島でも手に入りやすい直径約3センチの水道管や鉄筋を構造材に、民家の壁に使われていた焼き杉板を屋根材に使った。

 芸術祭が終わった後も、運営を支える「こえび隊」のボランティアらと営業を続けた。1~2年に1度は、点検と補修をする「屋根おろし」。19年の第4回芸術祭を前に、屋根を耐久性のあるヒノキ材に変更、鉄筋や金具を強化した。

 建設から10年以上経って日本建築学会賞を受けた。NPO法人瀬戸内こえびネットワーク職員で当初からかかわる大垣里花(さと・か)さん(46)は「活動を通して、建築の新しい意味を作ることができたと思います」。

(深山亜耶、写真も)

 DATA

  設計:安部良アトリエ一級建築士事務所
  階数:地上1階
  用途:レストラン、ギャラリー、休憩所
  完成:2010年

 《最寄り駅》:家浦港からバス


建モノがたり

 島キッチン(問い合わせは0879・68・3771)では日替わりの「島キッチンセット」(1760円)や「島野菜添えキーマカレーセット」(1430円)のほか旬の果物や野菜を使ったドリンクなどを提供。原則(土)(日)(月)(祝)、午前11時~午後4時(ラストオーダーは食事2時、ドリンク3時半)。2日前まで予約可。

◆安部良アトリエ一級建築士事務所
https://aberyo.com/

◆島キッチン
http://www.shimakitchen.com/

(2023年9月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)