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浦河フレンド森のようちえん(北海道浦河町)

柱も段差も遊具に 創造の場

浦河フレンド森のようちえん(北海道浦河町)
浦河フレンド森のようちえん(北海道浦河町)
浦河フレンド森のようちえん(北海道浦河町) 窓や換気口も含め、三角形構造が特徴的な園舎 森につながる出入り口がある南側 滑り台遊びもできる遊戯室と保育室の段差 斜めの柱の付け根も遊び場に 保育室も境がないワンフロア

森の中に現れた宇宙船? たくさんの三角窓のある建物の構造は、子どもたちを育む「仕掛け」にもなっている。

 競走馬の産地として知られる北海道日高地方の浦河町。地元で50年近く続く幼稚園が移転した「浦河フレンド森のようちえん」の新園舎は、平屋で延べ床面積約千平方㍍、バスケットコート2面分以上の広さがある。全体にフローリングが施され、中央の遊戯ホールを、交差する斜めの木組みが取り巻く。

 「理事長からの要望は、木造であることと、内部に壁がないことの2点だった」と設計した照井康穂さん(56)は話す。運営するフレンド恵学園の伊原鎭理事長(53)は、移転・建て替えを機に自然体験活動を中心に据えた幼児教育のメソッドの採用を計画、森を背にした丘を移転先に選んだのもそのためだった。

 壁を使わず耐震性を保つため、照井さんが採用したのが、長さ3・3㍍のカラマツ材を組み合わせた正四角錐のユニットを柱として建物を支える「立体トラス構造」。四角錐を3層積むことで、一部は2階建てより天井が高い大空間を実現した。

 給食を食べたり、お絵かきしたりする保育室は、遊戯ホールと木組みの柱で緩やかに区切られ、床が約70㌢高い。「子どもたちがその時の気持ちに合った居場所を選べる作り」を工夫したと照井さん。天井の3段階の高さや、それぞれ光の入り方が違う三角形の窓も、大きなフロアに様々な表情を加える。

 「柱をよじ登ったり、柱の付け根に寝そべったり、色々な遊び方を子どもたちが自ら生み出す姿が見られます」と伊原さんは話す。保育室と遊戯ホールの段差も、子どもたちにとっては滑り台だ。

 伊原さんは設計案を初めて見た時、斜めの柱に「大人が頭をぶつけるのでは」「合理的でないのでは」などと不安を感じたと明かす。しかし、できあがった園舎内には、森と同じように色々な空間ができていた。「子どもたちが自由な使い方を創造する園の理念を体現している」と気づかされたという。

 移転と同時に改めた「森のようちえん」の名の通り、森につながる出入り口もある。子どもたちは、「今日は森に出かけるチーム」など、その日の遊びのパターンを選んで過ごしている。

(本多昭彦、写真も)

 DATA

  設計:照井康穂建築設計事務所
  階数:地上1階
  用途:幼保連携型認定こども園
  完成:2022年

 《最寄り駅》 札幌から車


建モノがたり

 車で約10分の浦河町立郷土文化伝習館馬事資料館(お問い合わせは0146・28・1342)は、年間約1300頭の軽種馬(サラブレッド)を生産する浦河町における馬の歴史などが学べる。同町立郷土博物館も隣接。無料。[前]9時~[後]4時半。[月][祝]、12月30日~1月5日休み。

(2023年10月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)