サケの遡上で知られる千歳川。季節ごとに違うサケの自然な姿を、室内にいながら見られる場所とは……。
北海道の淡水魚を中心に展示する「サケのふるさと 千歳水族館」。スロープで地下2階へ下りると、暗い部屋の片側に縦1㍍、横2㍍の窓が七つ並んでいる。
訪れた10月下旬、窓の向こうには体長70㌢ほどのサケが、都会の雑踏さながら行き来する姿があった。4年ほど前に生まれてここから海へ旅立ち、約3万㌔を回遊した末に子孫を残すために戻ってきたサケたちだ。合流する石狩川の河口から約70㌔、岩や石にぶつかったためなのか傷だらけの個体も。観光客や団体の小学生らが興味深げに見つめる。
川の中を側面から間近に観察できる「水中観察ゾーン」は、護岸の中に埋め込むように設置されている。壁に囲まれた魚を見るのではなく、自分が壁に囲まれて魚を見るスタイル。展示教育係長で学芸員の日原俊さんが「見ているのが自然の川とわかるのに時間がかかる人もいます」と話すのもうなずける。
古くからサケが豊富で、明治中期には人工孵化放流事業が始まった千歳。親魚を捕獲するため設置され秋の風物詩にもなっている「インディアン水車」を中心に1980年、周辺の観光振興を図る構想が策定された。その中核施設が同館だった。
河川改修に合わせて整備された水中観察ゾーンは、鋼矢板を川底に打ち込んで水流の一部をせき止めながら建設された。伏流水のしみ出しなどで難航したが、水族館本館に先駆けて完成した。
8月ごろから始まったサケの遡上は1月ごろまで。地上が雪に閉ざされると、水中ではサケの自然産卵が見られる。春にはサケの稚魚の群れ、夏にはコイ科のウグイの大群が産卵する。
開館以来、観察した魚類は40種。「幻の魚」といわれるイトウや海水魚のメナダも記録に残る。魚類以外にも昆虫、貝類、甲殻類、エサを求めて潜水する水鳥やアメリカミンクなど、現れる生き物は自然まかせ。「毎日何を見られるのかワクワクしています」と日原さんは話す。
(千葉菜々、写真も)
DATA 階数:地下2階、地上2階 |
徒歩4分の道の駅サーモンパーク千歳(☎0123・29・3972)は北海道の食文化や観光資源を発信する施設。農産物や加工食品の販売、フードコートなどで北海道を味わえる。
◆道の駅「サーモンパーク千歳」
https://www.salmonpark.com/