幾何学的な屋根がSFみたいな建物は、内部の構造も不思議な形をしていた。
約200平方㍍、周囲がガラス張りの堂内に入ると、恐竜の骨格標本のような柱が立ち並ぶ光景に目を奪われる。天井の垂木や軒げたも木がふんだんに使われ、完成後7年が経った今もヒノキの香りが鼻をくすぐる。
千葉県北西部、野田市郊外の「梅郷礼拝堂」は、古い墓地の再整備を機に建てられた。霊園を開発、管理運営する笹川詩門さん(36)らは、雑草が茂り近寄りがたかった墓地の雰囲気を一新し「訪れるたびに愛着が増すような空間」にしたいと考えた。
欧州の霊園も見学し、生け垣やれんがの仕切り壁で区画。その中にたたずむ礼拝堂は屋根のカーブが美しい、上から見ると3枚羽根のプロペラのようなユニークな形だ。オブジェのようだが、設計した加藤詞史さん(59)は「形を優先してデザインしたのではない」という。
内部の柱の1本1本はよく見ると細い。加藤さんが「南京玉すだれ」と説明する、105㍉角の製材を十数本ずつ大道芸の道具のように組み合わせたものだ。弓なりの「玉すだれ」を3方向から互いにもたれ合うようにかけ渡すと、自立してドーム状の屋根を支える構造となる。
巨木や銘木ではない普通の製材を使った柱にはポツポツと黒っぽい節も残る。「どこにでもある材料を通して、木を身近に感じてほしい」と加藤さん。全体がユニークな形になったのも、細い材木を集めて使う工夫の結果だ。
全体で18組ある「玉すだれ」は、寸法や角度の違いで6種類ある。施工した工務店からは当初「どうやって作るかよくわからない」と〝悲鳴〟が上がったが、コンピューター使用に慣れた若手技術者が加わってクリアした。
縦横斜めに伸びるたくさんの柱。「個人個人が集まって、力を合わせるイメージに重なりませんか」
(島貫柚子、メイン写真も)
DATA 設計:加藤建築設計事務所 《最寄り》梅郷 |
徒歩3分のRAMBER CAFE RESTAURANT(☎04・7157・3070)は、犬の同伴もできるカフェ。(午前11時~午後8時半)。ドッグラン(9時~6時)も併設されている。(月)((祝)の場合は翌平日)休み。