ヨーロッパの街角みたい? そうです、AI(人工知能)も認める、アレのそっくりさん。なぜここに造られた?
直径25㍍、高さ32㍍、透明な傘を広げたような丸亀町壱番街前ドーム。世界の観光地に似た四国のスポットを見つけるコンテストで2022年、堂々のグランプリに輝いた。イタリア・ミラノにあるアーケード「ヴィットリオ・エマヌエーレ2世のガレリア」との類似度は、AIの判定で88・4点だった。
ドームが立つのは高松市中心部、南北に470㍍続く商店街の北端。近くには百貨店、ドーム1階には高級ブランド店があり、ドーム下の広場では年間250ものイベントが開かれる。
「ぼくら商店街の企画ではなく、市民のみなさんの持ち込みです。市民が自由に使える舞台作りがコンセプトでした」と、高松丸亀町商店街振興組合理事長の古川康造さん(66)は話す。
発端は1980年代後半にさかのぼる。瀬戸大橋開通や郊外大型店出店に商店街は危機感を持った。全国で視察や調査を行い、「民間主導で」「居住者を呼び戻す」再開発に取り組むことになった。
その象徴として交差点に広場を計画したが、アーケードの中といえども公道上には多くの規制がある。そこで周囲の建物をセットバック、民有地を提供するとともに、関係機関と交渉の末、商店街が管理する広場を実現した。
「ハレの空間である広場にはひと目でそれとわかるものをと考えた」と振り返るのは、ドーム設計に携わった坂倉建築研究所元所長の太田隆信さん(89)。鉄骨構造の外側を覆うのは透明度と耐久性の高い特殊ガラス。地震が多い日本に合わせて鉄骨の骨組みの強度を高める工夫をした。
計画から30年以上、現在も再開発は進行中だ。新築商業ビル上階のマンションは高齢者向けを想定していたが、近年は若い世代も関心を寄せる。「中心部への回帰は明らか」と古川さんは手応えを感じている。
(佐藤直子・写真も)
DATA 設計:坂倉建築研究所 《最寄り駅》 片原町 高松丸亀町商店街 |