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夢みなとタワー(鳥取県境港市)

構造で魅せる 「低さ日本一」

木と鉄骨が幾何学的な形を描く。入館料300円。午前9時~午後6時(10~3月は5時)。第2(水)休み

 

 高いばかりが能じゃない。山陰の港町には、低くても特色あるタワーが立っていた。

 日本一高いタワーと言えば東京スカイツリー(634メートル)。鳥取県西部、日本海に突き出た埋め立て地に立つ「夢みなとタワー」は日本一低いという。

 ドーム形の低層棟から伸びるひょうたん形のタワーは高さ43メートル。2017年には「全日本タワー協議会」に当時加盟の20施設の中で最も低いとされた。展望室まで上ると「日本で一番低いタワー」に登頂した記念の認定証がもらえる。

 ガラス張りのタワーの内部は、意外にも木の香りが漂う。ゆるくカーブするガラス面を見上げると、回りを囲むのは木製の格子。「鉄骨造ですが、主役は木です」と、設計した建築家の杉本洋文さん(71)は話す。

 1997年に開かれた「山陰・夢みなと博覧会」のシンボルとして計画された。各地の博覧会でパビリオンを手がけていた縁で依頼を受けた杉本さんは、ゆかりのない山陰地方を知るため鳥取や隣の島根を訪ね歩いた。スギなどの木材産地があること、三徳山三仏寺投入堂(三朝町)や仁風閣(鳥取市)など貴重な木造建築の存在を知り、木をアピールすることを考えたという。

 出雲大社の社殿がかつて、高さ約48メートルに達するものだったという説も木造高層建築のイメージを刺激した。出雲大社では2000年、巨大本殿説の信憑(しん・ぴょう)性を増す直径3メートルもの柱の跡が見つかっている。

 木と鉄骨のハイブリッドタワーを「テンセグリティ構造」が支える。上下に貫く鉄柱と層状に繰り返すリングの梁(はり)。縦横斜めに架け渡されたワイヤーの張力が全体のバランスを保つ。「中からも外からも透明感のある美しい構造にしたかった」

 展望室からは日本海を望む360度の大パノラマ。なんであれ日本一は素晴らしい。「登頂認定証」に書かれた文句にうなずいた。

(島貫柚子、写真も)

 DATA

  設計:計画・環境建築
  階数:低層棟 地上4階/タワー棟 地上3階
  用途:ホール、展示室など
  完成:1997年

 《最寄り》米子空港から車


建モノがたり

 徒歩12分の澤井珈琲(コーヒー)ファクトリー店(☎0570・050381)は、米子市で1982年に創業したコーヒー専門店の本社工場に併設された店舗。もともとコーヒー嫌いだった社長が「おいしいコーヒーを作りたい」と脱サラして始めたという。おすすめは香り高い「やくもブレンド」。午前9時~午後6時。店内では、本日のコーヒーの試飲も。

(2024年3月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)