「親不孝通り」から路地に入ると目が合ってしまう不思議なビル。
だれが、なんで建てたのだろう?
福岡市繁華街の「親不孝通り」。「マジックスクエアビル」は、車1台がせいいっぱいの細い路地の先に立つ。波打つ頂上部、目玉のような装飾、中央部に突き出た仮面のような造形はバルコニーの柵だろうか。
ビルを所有する会社によると、競売で購入した物件のため設計者や完成年などの記録は残っていない。1、2階に入居するライブハウス・クラブ「キースフラック」代表の男性(44)に聞くと、少なくとも30年前からビルはあったという。
男性は北九州市の出身で、子供の頃から音楽好き。大学時代からDJをしていたこの店を前代表から引き継いだのは12年ほど前だ。ビルの詳しい来歴は知らなかったが、似たデザインの建物が福岡県内に数カ所あると教えてくれた。
このうち久留米市にある貸ビルは、名前も同じ「マジックスクエアビル」。所有者の荒木研二さん(65)は、ガウディの「サグラダ・ファミリア」に着想を得たデザインと伝え聞いているという。
バブル末期の1991年にカラオケ店として建てられた。事業縮小でビルを売却することになった約15年前、運営会社のカラオケ部門責任者だった荒木さんが買い取った。建設当時の書類には、福岡市南区の建築事務所の名前が記されていた。福岡市のビルも同じ事務所の設計では、と荒木さん。ネット検索した電話番号にかけてみたが、解約されていた。
再びキースフラック。「僕がやらないとお店がなくなっちゃうから。音楽を表現する場所を守らなきゃという一心だった」と、代表の男性は経営を引き継いだ理由を話した。全国的に風営法違反容疑でのクラブ摘発が続いた時期で、この店も存続が危ぶまれる状況だった。
知りたかった建物の詳細は、結局よくわからなかった。が、街や人から感じたエネルギーが、何よりビルを物語るように思えた。
(笹本なつる、写真も)
DATA 階数:地上5階 《最寄り駅》:天神 |
「マジックスクエアビル」に似たもう一つのビルが、福岡市早良区の「カワナミ福岡西新ビル」。1990年建築で中央区や久留米のビルと同年代と思われるが、外壁がブルーと白に塗り替えられ、印象が違って見える。
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