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三陽工業株式会社(兵庫県明石市)

人も現場も笑顔に 見守る「目」

黄色やオレンジ色のキャラクターをあしらった倉庫
兵庫県明石市を走るJR神戸線。車窓に田園風景が広がると、色鮮やかなキャラクターが出現した。その正体は?
 
「あれ、な~に?」。JR魚住駅~大久保駅の車内で、外の景色を眺めていた子どもたちが声をあげた。
 
 ぱっちりとした大きな目が特徴の黄色のキャラクターと目が合った。隣に並ぶオレンジ色の「顔」も、熱い視線を送ってくる。
 
 壁一面にイラストが描かれた高さ20メートルの建物は、バイク部品の研磨を主軸とする製造業「三陽工業」の倉庫だ。
 
 愛嬌のある丸い目に、小さな耳までついている。社名や「ニッポンのものづくりに」と記された四角いスペースは、細長い口に見える。
 
 「見た人が笑顔になれるように」。デザインした広報担当の加賀史穂理さん(35)は、遠くからでも目立つ色をベースに、幅広い世代に親しまれるオリジナルのマスコットを描いた。
 
 この倉庫が誕生したのは2017年。事業拡大に伴って本社機能を移転し、別会社の古い工場や事務棟を買い取った。当時は灰色の壁に、昔の企業名が黒い文字で書かれた無機質な建築物だった。
 
 「やったことがないことをどんどんやろう」。08年のリーマン・ショック後、多角的に新事業に挑戦を続ける井上直之社長(46)が、ものづくりの魅力をPRするデザインを社員に募り、新しい顔が生まれた。
 
 SNSでも発信されるようになり、名前を公募。メインの黄色いキャラは「さよりん」と名付けられた。着ぐるみも登場し、スポンサーとなっている「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に姿を見せた。九州のサーキット場の橋には、大きな目をあしらった「さよりんブリッジ」も現れた。
 
 製造業が地味な印象をもたれていると感じることがあるという井上社長。成長を続けるさよりんについて、こう語る。「日本の製造現場を元気にするという社のコンセプトを体現している」
 
 倉庫の塗装をオーダーした際には「ほんまにやるの?」と何度も聞き返されたという。そのさよりんは今、未来を見つめる道しるべのような存在となっている。
 

(佐藤直子・写真も)

 

 DATA

  設計:三陽工業
  階数:1階
  用途:倉庫
  デザイン完成:2017年(さよりん)

 《最寄り駅》 大久保

三陽工業株式会社
 https://sanyou-ind.co.jp/company/


建モノがたり

 徒歩5分の鍵庄 大久保店(☎078・945・5757)は明石海峡周辺で採れる海苔やその加工食品を販売。一年で最初に収穫される新芽を使った海苔「一番摘み 明石の恵み」(8切、80枚入り、918円)はぱりっとした食感に口どけの良さが人気。原則午前9時~午後5時半。

(2024年6月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)