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田主丸駅(福岡県久留米市)

あふれる河童愛 つなぐ町の顔

田主丸駅(福岡県久留米市)
河童がひじをついて寝そべっているようにもみえる。
地域の住民はもちろん、観光などに訪れる人々からも親しまれている
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 JR久留米駅から列車に揺られ、果樹園や平原を横目に約30分。田主丸(たぬしまる)駅(福岡県久留米市)で出迎えてくれたのは?

 

 耳納(みのう)連山を背後に、木造2階建ての白い駅舎は愛らしくたたずんでいる。緑色の屋根の下、楕円(だえん)形の二つのはめ込み窓はつぶらな瞳のようで、黄色い三角形のひさしは嘴(くち)にもみえる。

 「河童(かっぱ)伝説を大切に継承している地域の顔」。河童をいかした町おこしに取り組む住民グループ「田主丸河童族」の菰田馨蔵(こもだ・けいぞう)さん(73)は笑顔で語る。

 中央アジアから大移動した河童の一大勢力「九千坊一族」が筑後川の支流、町を流れる巨瀬(こせ)川にすみついた――。そんな伝説が残る地に、芥川賞作家の火野葦平(1907~60)がたびたび訪れ、小説を通してもり立てたことが、いまにつながっている。

 「河童駅舎」は92年に誕生した。旧田主丸町の職員で建設計画に携わった井(い)房生さん(69)によると、28年に建てられた初代駅舎の老朽化が進むなか、竹下登内閣が「ふるさと創生」として全国の自治体に配った1億円を町が活用した。全町民に使い道を募る自由記述アンケートを実施し、選考会議で精査して「田主丸駅付近のイメージアップ」に使うことを決めた。

 デザインは、町内の県立浮羽工業高校の夏休みの宿題として生徒から募集。提出された複数の原案をモチーフに、町内の西村工務店が設計図におこし、JRから土地を借りて町がつくった駅だ。屋根の中心にせり出した採光窓で頭頂部のお皿を表現し、駅前の道路側にもホーム側にも同様の顔をあしらった。

 駅の待合室、特産品の展示場などに使われていた駅舎は、2018年のリニューアルでカフェ「KAPATERIA」に生まれ変わるなど、町民にも観光客にも親しまれている。

 住民たちの「河童愛」も衰えることはないようだ。ホームに河童の石像があぐら座りをするほか、町内のあちこちにモニュメントが置かれ、河童にちなんだ土産品も少なくない。

 2階の河童の目からは、平野に広がる町が見渡せる。河童に愛着を抱く地域の人々を見守っているようにみえた。

(片野美羽、写真も)

 

 DATA

  設計:西村工務店
  階数:地上2階
  用途:駅舎、カフェ
  完成:1992年

 


建モノがたり

 田主丸町内では河童めぐり散策が楽しめる。河童の石像が点々と立つ「カッパロード」のほか、「祈り河童」や「親子河童」の石像、河童の壁画など、数多くの個性豊かな河童を探索できる。
 あけぼのや(☎0943・72・2346)の銘菓「河童のへそ」も人気。
 詳しくは「田主丸町観光ナビ!」公式サイトを確認。
 ▶田主丸町観光ナビ!公式サイト https://www.tanushimaru.net/