120年以上の歴史を持つカトリック宮津教会。宣教師と宮大工が建てた聖堂には和洋織り交ぜた技術が詰まっている。
日本三景の天橋立で知られる京都府宮津市。青空の下、クリーム色の壁がまぶしい「宮津洗者聖若翰(せん・じゃ・せい・よ・はね)天主堂」が市街地にそびえ立つ。
外観は西洋風のロマネスク様式だが、ほのかに暗い聖堂に入ると、焦げ茶色の木造の列柱や天井のアーチが目に入ってきた。
「和洋折衷の建築に当時の様子がしのばれる」。神父の頭島光さん(68)は話す。
天主堂は1896(明治29)年、フランス人のルイ・ルラーブ神父が設計し、地元の宮大工が施工した。禁教が解かれて10年ほど経った1885年に宣教師として来日したルラーブ神父は布教に苦労したが、豪家から寄付された土地に念願の聖堂を建てた。
天井はアーチが特徴で、ヨーロッパの大聖堂にみられるリブ・ボールト構造。建材は丹後で伐採されたケヤキを使い、天井の重みを支える柱の土台は御影石で固定した。
正面や側面の窓は、幾何学模様にデザインした木枠に色ガラスをはめ込み、ステンドグラスのようだ。ガラスには小紋のような柄が施され、窓は引き戸になっている。
聖堂の形式はそのままに、日本の教会であることを考え、職人たちと相談しながら設計していったのだろう」。信徒が座る会衆席は畳敷きだ。
天主堂は、現在もミサが捧げられているカトリック聖堂としては国内最古級とされる。今年1月には国の重要文化財に指定された。
一時期は、信徒が祈りやすいように畳にパイプ椅子を置きっぱなしにしていたが、いまはミサが終わるたびに片付けている。信徒の一人は「先人の申し送りを途絶えさせず後世に伝えていきたい」。
日によっては、窓から差し込む色とりどりの光で畳が照らされるという。聖堂にたたずむと、あたたかな雰囲気も相まってどこか穏やかな気持ちに包まれた。
(中山幸穂、写真も)
DATA 設計:ルイ・ルラーブ 《最寄り駅》:宮津 |
宮津駅の隣の天橋立駅から約5分歩き、リフトかモノレールに乗って6~7分で山を登ると天橋立ビューランド(☎0772・22・1000)がある。天橋立を南側から一望できるスポット。時期によって営業時間が異なる。入園料および往復乗車券850円(大人)。原則無休。
天橋立ビューランド
https://www.viewland.jp/