神社なのに、カラフルなガラスが迎えてくれた。個性的な神門はなぜできた?
尾山神社(金沢市)の参道を進むと、本殿の手前に巨大な門がそびえ立つ。
3層構造で、高さ約25メートル。1層目は石造りのアーチが三つ連なった重厚なつくりで、2層目は木の開き戸と漆喰(しっくい)の壁を四方にしつらえた和風建築となっている。
さらに見上げると、3層目は一転して洋風のデザインが目にとまる。壁面の大きな窓は、青、赤、黄、緑と様々な色のギヤマン(ガラス)がはめ込まれていた。教会のステンドグラスのようだ。
「和洋漢の要素がバランスよく盛り込まれた建築」。尾山神社禰宜(ねぎ)の長谷紀之さん(54)は、神門の特徴を語るなかで、こんな言葉も使った。「いわば、ランドマークタワー」
神門が建てられたのは1875(明治8)年。加賀藩祖の前田利家と正室お松の方を祀(まつ)る尾山神社は、その2年前に創建されたが、ときは明治維新による廃藩置県の直後。参拝客が思いの外に少なく、当時の金沢総区長・長谷川準也(のちの金沢市長)が「荘厳にして堅固で、誰でも仰ぎ見たくなるような門」の建設を発案した。
設計したのは地元の棟梁(とうりょう)、津田吉之助。外国人の設計した洋風建築を見た日本の大工が、自らの技術で「擬洋風建築」をつくるようになった時代に、文明開化の流れに沿った神門をつくりあげた。
ギヤマンは、灯台のように明かりをともすことで、日本海を航行する船の目印になることも図ったという。
ただ、当初は斬新なデザインに反対意見もあり、新しい設計図や改修の見積もりまで出された。1935年に旧国宝、50年に国の重要文化財に指定されると、次第に街並みになじむようになっていった。
金沢駅や金沢21世紀美術館など、金沢市には個性的な建築がいくつかある。「最初は否定的な意見もあったが、今は調和されている」という長谷さん。「新しいものを吸収することが、金沢の伝統的な町文化をより輝かせている。その象徴が尾山神社だと思う」
(斉藤梨佳、写真も)
DATA 設計:津田吉之助 《最寄り駅》:金沢駅からバス |
徒歩4分のTEA SALON KISSA & Co.(☎076・282・9613)はホテル「KUMU 金沢 by THE SHARE HOTELS」併設のカフェ。禅語で「お茶を召し上がれ」の意味がある「喫茶去」が店名の由来。「お抹茶と和菓子のセット」の上生菓子は月替わりで提供。カフェ・バーは【前】11時~【後】11時(ラストオーダー1時間前)。原則無休。