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namBa HIPS(ナンバヒップス 大阪市)

高く突き抜けた 遊び心の「看板」

フリーフォールからクライミングウォールに形を変えた「看板」
 カニやたこ焼きを模した巨大な看板が並び、ビルに据え付けた観覧車がにぎわう大阪ミナミ。エネルギッシュな街の中でも、御堂筋に面した高さ86メートルのビルは独特な存在感を示している。
 
 パチンコ店や飲食店が入る「namBa HIPS」。通りに面した銀色の壁面の大半は「!」のような形でくぼんでいる。へこんだ空間の中央に鉄製のレールが垂直に置かれ、縦長の茶色い壁も目にとまる。
 
 「2007年の開業当時はフリーフォールを設置し、御堂筋に絶叫が響いた」。ビルのオーナーで、レジャー産業を展開する平川商事の平川晴基社長(60)は振り返る。
 
街自体がエンターテインメントの難波で、さらに多くの人をドキドキさせたい。「あそびゴコロが動き出す」を事業の一つの理念に掲げる平川社長は、フリーフォール設置を条件に設計を依頼した。
 
 引き受けたのは、ユニークな建物を多く手がけていた建築家の高松伸さん(76)。「場所は大阪のカオスのど真ん中。それに建築と無縁の遊具なんて面白い」
 
 正面の壁の高さを確保するため、屋上を傾斜させ、横から見ると三角形にみえる独特な建物になった。乗客に落下の迫力を感じさせるため、透明な遊具が途中で狭い空間を通り抜ける設計にした。「難波で突き抜けるには強力な個性が必要だった」という。
 
 6人乗りのフリーフォールは高さ74メートルまで引き上げられ、秒速22メートルで一気に60メートル落下する。「晴れた日は大阪湾がよく見えた」。平川社長は話す。
 
 年40万人の利用を見込んだが、機械トラブルで翌年、運行中止に。このビルは我々の看板と11年、高さ25メートルのクライミングウォールに再生し、世界大会も開かれた。しかし、ビル前で歩行者天国が開かれなくなり、最近はクライミングも見送られている。
 
 「あれなんや? 発射台ちゃうか?」。当初はそんな声も聞かれたランドマークは、今も外国人観光客らをひきつける。平川社長は看板の復活を願っている。
 
 

(佐藤直子、写真も)

 DATA

  設計:高松伸建築設計事務所
  階数:地上12階、地下2階
  用途:複合レジャー施設
  完成:2007年12月

 《最寄り駅》:地下鉄なんば

 


建モノがたり

 徒歩2分の上方浮世絵館(☎06・6211・0303)は、道頓堀の南側、法善寺の門前にある。道頓堀を中心に上演された歌舞伎を描いた浮世絵など、江戸時代に大坂や京都で制作された「上方浮世絵」を展示。浮世絵グッズも。700円。午前11時~午後6時。原則(月)休み。
 
2024年12月17日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください