昭島駅から歩いて約10分、緑豊かな東京の郊外に5階建てのガラス張りのビルが姿を見せた。
ルーバーのように周囲に配列されているのは、何百本にもおよぶ乳白色の金属管。よく見ると、管の太さや配置の間隔がまばらで、柔らかなリズム感も伝わってくる。
水処理大手「栗田工業」の研究開発拠点「Kurita Innovation Hub」は2年前に誕生した。設計を担当した日建設計の頭井秀和さんは「栗田工業ならではのデザイン。地域との調和も大切にした建築」と振り返る。
外装の金属管は、水処理で実際によく使われる配管をモチーフにし、3種類の太さで構成した。水をまとったような表情を見せるだけでなく、一部は雨どいや換気の機能も果たしている。
建物全体にも、水の企業の技術が詰まっている。研究施設ゆえに1日に使用する水は最大で1千トン。その80%を研究やトイレ洗浄水などに再利用し、敷地内に降った雨水は貯留浸透槽で土壌に浸透させ、地下水にかえすことで、水循環をさせているという。
最先端の技術を開発する研究施設なのに、外から中の様子が見える開放的な雰囲気も大きな特徴だ。道路をはさんで、水処理装置を見学したり、水をきれいにする技術の研修を受けたりすることができる複合機能施設も併設している。
「水問題は世界的な課題。研究所をオープンにして社内外のアイデアを持ちより、水資源を守る技術を早く、数多く生み出していきたい」
そんな願いを込めた「Hub」だと、栗田工業の内保顕さんは言う。
昭島市は東京都内の自治体で唯一、水道を深層地下水のみでまかなっている。おいしい水で知られる街に誕生した水の施設。企業や大学の研究者、社会科見学に訪れる小中学生など、多くの人たちが交流する拠点となっている。
(増田裕子、写真も)
DATA 設計:日建設計 《最寄り駅》:昭島 |