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馬嶋屋菓子道具店(東京都台東区)

吹き抜けに3千個 型の宝探し

クッキー型と同じ番号のついたブリキの箱(左奥)には在庫が入っている

  包丁や食器など調理器具を扱う店が集まるかっぱ橋道具街。プロの料理人が通う街として知られるが、インスタやYouTubeをみて「映える」と訪れる人も目立つのが、「馬嶋屋菓子道具店」だ。


 店に入ると目にとまるのが、3階の天井までそびえ立つ大きな金網のフェンス。それを囲むように階段が設置され、ハート形や動物、乗り物など、ブリキやステンレス製のクッキー型が3千個もつるされている。


 地下から3階までの吹き抜け空間に置かれたフェンスは「クッキータワー」と呼ばれている。真っ黒な金網に銀色のクッキー型が輝き、飾り付けられたクリスマスツリーのようだ。


 「3千個の型を実際に見てもらいたい」。代表の吉田友重さん(53)は、店舗を建て替えるときにディスプレーを最優先で考えた。


 1951年の創業時は、職人向けの和菓子の木型や製菓機械を扱った。その後、パンや洋菓子の型作りなどにも力を入れ、2010年ごろには個人客も含めて様々な型を求める人が増えてきた。「型の厚みや質感を確かめてもらい、多くの人にお菓子作りを楽しんでもらえればと思った」


 店舗の敷地面積は約70平方メートル。建築家の吉田昌弘さん(47)が提案したのが、狭い店内を逆手にとり、通常は店の裏にある非常階段を建物の真ん中に設置する設計だった。


 フェンスに展示するクッキー型は見本として番号をつけ、同じ番号の商品を階段の壁面に配置したブリキの箱に収容。来店者が必要な個数を取り出す仕組みにした。「宝探しのように楽しんでもらえたら。店員の手間も省けるかもしれない」


 レジの後ろの壁には、ものづくりへの思いを忘れないようにと、創業以降に作られた木型が飾られている。客の要望でオリジナルのクッキー型をスタッフが手作りすることもある。
 「タワーができて変わったのは客層だけじゃない。スタッフの意識も変わった」。店長の桜井裕さん(42)は笑顔で語った。

(佐藤直子、写真も)

 DATA

  設計:KAMITOPEN  一級建築士事務所
  階数:地下1階、地上3階
  用途:店舗
  完成:2019年

 《最寄り駅》:田原町

 


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2025年3月18日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください