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明治大学 和泉ラーニングスクエア(東京都杉並区)

カラフル立体 宙に浮く学び空間

グループボックスは、壁の色がよく見えるよう、角度もこだわった

 吹き抜けは何のため? そこに点在するカラフルなボックスは何? 明治大学の新たな教育棟とは。

 明治大学和泉キャンパスの甲州街道沿いにたたずむ「和泉ラーニングスクエア」。8階建ての教育棟は、各階の大きなガラス窓と半屋外のテラスが印象的だ。

 

 

 中に入って目を奪われるのは、1~3階の吹き抜けに面したカラフルな立体の数々。4、5人が入れる透明の四角い小部屋が計10室ほど、まるで宙に浮いているかのようにみえる。

 「主に少人数での学習に利用されているグループボックスです」。明治大学管財部の菅和禎さん(55)は話す。椅子やテーブルのデザインは部屋ごとに異なり、その日の学習内容や人数によって学生が自由に選んで使っている。

 旧校舎の老朽化に伴う建て替えが決まったとき、菅さんは現代教育に似合う建築をイメージした。学生たちが自然と集まり、自主的に学ぶ空間をつくりたい——

 設計を担当した山崎敏幸さん(55)と協力し、図書館を利用する学生にアンケート。海外の建築写真も1千枚以上集めて議論した。学生に人気のカフェからも着想を得て、「静かすぎず賑(にぎ)やかすぎず」「4人前後のグループ行動」「スタイリッシュで魅力的な空間」「緩やかな境界」などのキーワードを見いだしていく。

 吹き抜けは広場としてとらえ、そこに人が集まる仕掛けを考えた。1階のラウンジ「センターアゴラ」は床を数段掘り下げて劇場型の空間を演出。建物内の壁の色はグレーを採用し、「主役は学生。人や家具を浮き上がらせる効果も図った」と山崎さんは語る。

 開放的な空間は当初、一部に反対する声もあったが、学生どうしで「見る・見られるの関係」が生み出され、学習意欲が刺激されている様子だという。

 新校舎は創立140周年事業として建てられ、大学の伝統も反映された。解体された第二校舎は、明大建築学科を創設した堀口捨己の設計で外部スロープが特徴の一つだったが、緩やかな外部階段を設けて受け継がれた。

 明大卒で、かつて第二校舎で学んだ菅さんは語った。「学生の頃の思い出は大人になっても支えになる。だからこそ、記憶に残り続ける建物にしたかった」

               (斉藤梨佳、写真も)

 



 DATA

  設計:松田平田設計
  階数:地上8階
  用途:教育棟
  完成:2022年

 《最寄り駅》:明大前


建モノがたり

 徒歩8分のマーメイドコーヒーロースターズ明大前(☎03・6265・8989)はコーヒーと焼き菓子が人気のカフェ。毎月替わる限定ドリンクも。自家焙煎(ばいせん)の豆を使用した「ブレンドコーヒー」は、深煎りか浅煎りを選べる。【前】9時~【後】6時。不定休。詳細はインスタグラム参照。

(2025年4月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)