高層ビルの間に広がる公園に、木造のカフェが佇(たたず)んでいる。周囲に溶け込んで見えるのは、なぜ?
タワーマンションや複合施設が林立する都心の豊洲地区。豊洲公園を歩いていると、木造平屋のカフェが目に入る。朝からコーヒーを楽しむ来客でにぎわい、目の前の芝生では子どもたちが遊び回っていた。後ろに立つ高層ビルとのコントラストが、なんとも不思議に見える。
「ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ」は、大手コーヒーチェーンの同社が初めて建物からつくった店舗だ。設計を依頼され、まず現地に出向いたスキーマ建築計画の長坂常さん(54)は、「ここで楽しく過ごしている人々の邪魔をしたくないと思った」と振り返る。
広さは約300平方メートル。共存できる建物を目指す中で、カフェそのものだけでなく、公園全体をカフェの一部として捉えることを意識した。存在感が強くなりすぎないように棟を五つに分割。「半屋外」と呼ぶ屋根つきのテラス席をつくり、公園とカフェの境目をあいまいにさせた。店内まで延びるれんがの床が公園とカフェを緩やかにつなぐ。
店内に入ると、大きな窓から東京湾や芝生など自然豊かな風景が飛び込んでくる。上部の壁には、グラシン紙のような見た目の半透明のFRP(繊維強化プラスチック)が使われ、店内をふんわりとした明るさで包む。夜になると中の明かりが柔らかく外部に漏れ、光も行き来する空間となっていた。
「商売では中に囲い込む方がいいという考えもあるが、公園全体がお客さまという発想です」。オーナーらと話し合いを重ね、店内36席、半屋外40席という開かれた店舗が誕生した。
地域の人々から愛される公園のカフェは、席の確保も難しいほど人気となった。時おり、地域の幼稚園児たちが誤って店内に入ってくる。週末に家族で来ているため、何げなく入ってきてしまうそうだ。
色や素材は極力少なく、空間はシンプルに——。かつて同社の創業者と対話し、同じ考えを持つ長坂さんは、家具をれんが色にそろえるなど洗練された空間をつくりあげた。カフェ副店長の宮本彩加さん(30)は「この建物に込められた思いを今度は私たちがゲストに届ける番です」と話した。
(斉藤梨佳、写真も)
DATA 設計:スキーマ建築計画 《最寄り駅》:豊洲 |
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