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東京ジャーミイ(東京都渋谷区)

日本とトルコの技が彩る 交流と祈り

見学は午前10時~午後6時(金曜日は午後2時半から)。女性はヒジャブ(頭部を覆う布)を着用して礼拝堂に入る

青みがかった神聖なドームに、高さ約41メートルのミナレット(尖塔)。国内外の人々をひきつけている。

 

 息をのむほど美しい礼拝堂だ。扉や壁の細かな幾何学模様に、青や黄、緑に彩られて繊細な輝きを放つステンドグラスの窓--。

 東京・代々木上原駅から歩いて5分ほど。閑静な住宅街で異国情緒あふれるイスラム教の礼拝堂は、日本最大規模のモスク「東京ジャーミイ」だ。

 天井を見上げると、色鮮やかなドームと、それを囲う六つのドームが目に飛び込んでくる。中央のメインドームは高さ約23メートル、直径約10メートル。静かに礼拝堂を包み込む。

 「トルコと日本の協業で今のかたちになりました」。鹿島の佐々木歩さん(57)は振り返る。

 1938年建設の初代モスクの老朽化に伴い、2000年に建て直されたモスクは、トルコの建築家ヒルミ・シェナルプ氏が基本設計を、鹿島が実施設計と施工を担った。

 基本設計では、ドームを支える柱のうち、細い柱は大理石だった。日本の耐震基準に適合させるため、これらの細い柱は超高層建築で使われる技術をいかし、鋼管柱の中心部にコンクリートを注入する工法で外形寸法を変えずに強度を高めた。
 外装材にはライムストーン(石灰岩)が指定された。雨の多い日本ではあまり使わない素材で、通常の倍ぐらいの厚みをつけた。木の扉も防火対策を徹底した。「法的な条件、気候条件を日本に適合させました」。祈りの方角がメッカに向かうようにモスクの角度も修正した。
 一方で、内外装の装飾はトルコから訪れた約70人の職人が担った。幾何学模様やアラビア文字は、トレーシングペーパーを用いて手描きで仕上げられた。
 2年かけて日本とトルコの技術を重ねた。佐々木さんは「本質、本物にこだわった設計で、空間から感じる力がある」と語る。
 金曜日の集団礼拝は、多い日で約千人がひしめき合う。トルコから来日して半年のダヴァルチ・ハテイジェさん(26)は「ふるさとを離れた寂しさを忘れ、色々な人と交流できる大切な場所」とほほえむ。
 東京ジャーミイ広報の下山茂さん(76)は「イスラム教徒の活動拠点と同時に、日本人のイスラム理解の場になってほしい」と話す。伝統的な建築は、異文化交流の場としても大切な役割を担っている。

(大石裕美、写真も)

 DATA

  基本設計:ヒルミ・シェナルプ
  実施設計:鹿島
  階数:地下1階、地上3階
  用途:礼拝所
  完成:2000年

 《最寄り駅》:代々木上原

 

 建モノがたり徒歩約5分にある古賀政男音楽博物館(☎03・3460・9051)では、千曲以上の「古賀メロディー」を試聴できる。古賀政男が過ごした書斎や日本間が展示され、日本の大衆音楽の発展に貢献した作詞家や作曲家らのゆかりの品々も見ることができる。午前10時~午後5時(入館は4時半まで)。550円。月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始など休み。