透かし彫りのような複合商業施設は時とともに表情を変える。誕生して10年目。移りゆく銀座の街並みも映してきた。
外国人観光客らの人波が絶えない東京・銀座4丁目交差点。白い外観が目をひく11階建て、高さ56メートルの「GINZA PLACE」は「遊び心」にあふれている。
壁を覆うのは約5300枚のアルミパネル。ひし形のパネル1枚の横幅は約96センチで統一されるが、縦幅は約20~400センチとさまざま。上層にいくほど縦幅が広がり、空に伸び上がるようだ。3階と7階にあるガラス張りのテラスの上下の壁面は丸みを帯び、内側に入り込んでいるように映る。
「凹凸のあるパネルの縦方向の大きさの違いによる錯覚の効果で、だまし絵みたいとも言われます」。設計した大成建設の芦谷公滋さん(48)は話す。
職人の優れた技能を表現するクラフトマンシップがコンセプトの一つ。建築ユニットとともに描いたデザインは透かし彫りを模した。工芸品のように組み込まれたパネルは、太陽が傾くにつれて陰影を描き、豊かな表情を醸し出す。。
銀座の歴史もにじませる建築だ。7階テラスは高さ31メートル。かつて銀座の建物は「百尺」の高さ制限があり、その高さと一致する「スカイライン」を描いた。3階テラスは、明治時代に銀座の多くのビルに設置されたバルコニーと同じ高さ。「パレードが見下ろせるようにガラスの手すりを設置しています」
一方で、パネルを固定する留め具は、揺れを吸収する可動式で、特許をとった先端技術がいかされている。パネルの開口部には計410個のLEDを設置。夜になると点灯し、街を華やかに彩る。
「伝統と品格を重んじ、常に新しさも取り込む街」。オーナーのサッポロ不動産開発で建て替え時に担当した大貫一弥さん(61)は、銀座をそうみている。「伝統と先進を融合し、発信と交流の拠点にしたい」。建て替え前に老舗店主らに伝えると、斬新なデザインも温かく受け止められた。
高級品を求める買い物客が目立つ銀座は近年、デイリーユースのブランド目当ての若い世代も増えている。昭和時代に建てられた「和光」や「三越」が囲む交差点の一角で、「銀座の顔」の歴史をつなぐ役割を担っている。
(野村雅俊、写真も)
DATA 設計:大成建設、クライン・ダイサム・アーキテクツ 《最寄り駅》:銀座 |
徒歩5分のビヤホールライオン銀座七丁目店は1934(昭和9)年開業。赤褐色のタイル壁、ブドウを模した照明、ガラスモザイク壁画がレトロな雰囲気を今に伝える。名物が生ビールの「一度注ぎ」。熟練スタッフがジョッキを傾けて一気に注ぎ、のどごし良く爽快な味に仕上げる。午前11時半~午後10時(金土祝前日は10時半まで)。無休。