山陰・鳥取にある小さなホスピス。患者とともに、野の花がある。生と死は野の花のように様々という。
壁にいけられた水仙や山茶花(さざんか)、野葡萄(ぶどう)が優しく迎えてくれた。ボランティアの人たちが持ち寄った野の花だという。
鳥取市の住宅街。玄関の看板に、哲学者の鶴見俊輔さんの書で「野の花診療所」とある。末期がんなどで治癒の見込みがなくなった患者にホスピスケアを行っている。19床の診療所を院長の徳永進さん(77)をはじめ、看護師やボランティアの人々が切り盛りしている。2、3日おきに患者が他界するという。
徳永さんは鳥取赤十字病院の内科部長だった。忘れがたい患者との出会いと別れが続いた。しかし、時代の流れで臨床の現場でも、告知に化学療法、生存率といったパターン化した言葉が目立つように。結果、死ぬことさえ没個性に見えてくる。53歳で診療所の開業に踏み切った。
設計したのは、鳥取県倉吉市の建築家、生田昭夫さん(77)。同い年の団塊の世代。徳永さんの姿勢に共鳴し、開業の2年ほど前から試行錯誤を繰り返す。先進例を探ろうと、イギリスのホスピスケア施設にも見学に行った。
床には桜材を敷いて、温かく、やわらかい空気を醸し出した。患者も付き添いの人も集える「広場」のようなスペースを2階に設け、お酒をたしなめるバーカウンターもある。屋上にはスロープを広めにとり、ベッドのままスムーズに花火や満月をめでる好位置につけられるようにした。
玄関脇の図書室には生と死への思索を誘う本が並ぶ。大切な人を失った人々が胸中を語り合う「小さななずな会」も時に開かれる。
「人が生きて死んでゆく姿は、それは野の花のようにそれぞれでしてね」と徳永さん。目指すのは「死を待つ人の家」。自身もスタッフもともに野の花として群生してゆきたいという。
(木元健二、写真も)
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DATA 設計:生田昭夫 《最寄り駅》:鳥取 |
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東西16キロ、南北2・4キロに広がる雄大な鳥取砂丘は、鳥取駅からバスで約20分。鳥取砂丘ビジターセンター(☎0857・22・0021)は砂丘の魅力を伝える展示や映像を備え、観光案内に対応。砂丘をよく知るガイドも常駐している。午前9時~午後5時。14日水、2月12日木は休館。