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埼玉県立大学(埼玉県越谷市)

学科をつなぐ 長さ250メートルの学舎

近未来的なたたずまいの校舎。中央の斜面は「連携と統合の丘」と呼ばれている

端から端まで歩くと約4分かかるガラス張りの長大な校舎。この校舎に建学の理念が込められている。

 広大な水田が残る郊外に、ほとんど直線だけの無機質なフォルムが浮かぶ。巨大な宇宙基地のようだ。

 1999年に開学した埼玉県立大学のキャンパス。約10万平方メートルの敷地に、長さ250メートル超、幅約23メートルの細長い4階建ての2棟が平行して立つ。

 開放的で近未来的な景観から、「相棒」や「半沢直樹」など多くのドラマ、映画の撮影舞台になり、学内には出演者たちのサイン色紙が多数飾られている。

 設計者は「プリツカー賞」を2024年受賞した山本理顕氏(80)。思い描いたのは「学生が所属の垣根を越えて交流しやすい建物」。

 大学は保健医療福祉学部に看護やリハビリテーション、福祉などを学ぶ5学科がある。卒業後の現場では、専門を越えて仕事をする場面が多く、大学は「連携と統合」を建学の理念に掲げる。山本氏はこの理念に基づいて、学科ごとの分散配置はなく、各分野をひとつに包み込む大きな建物を構想した。

 周辺の風景と調和するよう、高さを抑えた分、校舎は長大な姿になり、敷地の端にある講堂を起点にして校舎2棟を平行に置くキャンパスが生まれた。

 2棟の間の2階部分に芝生スペースもあるデッキが設けられ、両棟を行き来できる。両棟には1階から4階まで吹き抜けの広いスペース「メディア・ギャラリー」があり、学科の違う学生どうしが意見を交わしながらレポートを書く姿も珍しくない。

 工場でつくったコンクリ部材を現場で組み立てる「プレキャスト・コンクリート(PC)」工法を採用。山本氏は「国内でこれだけ大規模な建物をPCで造ったのは初めてと思う。高強度で、しかも精度の高い部材を使っており、千年でももつ。建築家は後世の評価にも堪える建物をつくる責任がある」と話す。

 「連携と統合」を掲げ開学してから四半世紀余り。大学側も実習や演習で「連携」を学ぶ科目を設け、学生は他学科の科目も履修できるなど工夫を重ねている。大学の広報担当者は「学生どうしの連携をキャンパスも支えている」と話す。

(川崎卓哉、写真も)

 DATA

  設計:山本理顕設計工場
  階数:地上4階
  用途:大学
  完成:1999年1月

 《最寄り駅》:せんげん台


建モノがたり

 車で約20分の日本庭園「花田苑」(☎048・962・6999)は池を囲んで梅や桜、藤など四季の花を楽しめる。茶席では茶会(有料)も。3月31日までは午前9時~午後4時。4月1日~9月30日は5時までで、土日祝は7時まで。入園料100円。隣に「こしがや能楽堂」もある。

2026年1月20日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。