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築地本願寺(東京都中央区)

※写真、築地本願寺提供

 

 江戸幕府から与えられた海を、門徒たちが埋め立て土地を築いたことから「築地」と呼ばれるようになった。
 その地に建造された本堂は何度か再建された後、関東大震災(1923年)での焼失をうけ、11年後に耐震耐火性を重視した、異彩を放つ鉄筋コンクリートづくりの本堂として姿を現した。


 左右対称に伸びる約87メートルの本堂は仏教発祥の地古代インドの様式で、外観は花崗岩造り。真っ先に目をひく巨大な円形屋根は緑青色の銅板ぶきで、5本の尖塔がそびえる。正面入り口上部には花をあしらったステンドグラスがはめられ、両側の柱はローマ・ドリス式を思わせる。


 日本の伝統的な仏教建築とかけ離れた型破りな寺院は、浄土真宗本願寺派第22代宗主大谷光瑞と近代日本を代表する建築家伊東忠太との出会いから生まれた。
 

 仏教伝来の調査のため中央アジアを巡っていた大谷が、世界各地の建築を巡っていた伊東と出会って意気投合して設計を依頼した。


 資料によれば、再建にあたって大谷は「寺へはインド人も来る。ビルマ人も来る。白人も来る」「どの民族からも迎えられるものが必要だ」と考えていた。設計図案は木造を含めて複数あったが、「斬然たる新意匠」を重視して今の様式に決定したという。


 中央に阿弥陀如来を安置する本堂に入ると、シャンデリアがつるされ、僧侶がお勤めをする「内陣」は、漆塗りの板張りで極彩色の蓮華文様の格天井など伝統的な浄土真宗の本堂形式だ。だが、参拝スペースの「外陣」は寺院建築では珍しく土足で入れる椅子席になっている。「気軽にお参りいただきたいという考えから」(築地本願寺)と言う。


 付帯設備には、集中暖房装置や水洗式トイレなど当時としては珍しい最新技術が取り入れられた。


 2014年、国の重要文化財に指定された。大の動物好きで知られる伊東の遊び心も、至るところにちりばめられている。階段の手すりの象や馬、壁の猿など動物彫刻は13種類にのぼる。
 

 東西の文化が融合したオリエンタルな空間は、人種や宗教を超えて人々を引きつける。

(水越悠美子、写真も)

 

 

2026年末まで保存修理工事中。

銅板懇志を募り、雨漏りしていた既存のヴォールト屋根の上に、新しい銅板を重ね葺きした。

銅板の裏には、寄付した六千名の名前が記され、次の百年を支える。

 

 

 

 DATA

  設計:伊東忠太
  階数:地上2階、地下1階
  用途:寺院本堂、講堂など
  完成:1934年

 《最寄り駅》:築地


建モノがたり

 徒歩約10分の「塩瀬総本家 本店」(☎03・6264・2550)は創業670年余り。大和芋と米粉の皮で極上の小豆餡を包んだ「志ほせ饅頭」(9個入り、1620円)が名物で、しっかりとした歯ごたえと風味の良さで人気だ。午前9時~午後6時半(日祝は10時~6時)。不定休。

 

2026年2月17日、朝日新聞夕刊から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。