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鵜住居小学校・釜石東中学校(岩手県釜石市)

子供たちは希望 復興のシンボル

大階段には津波の高さを示すオレンジ色の印があり、「ここより上へ‼」と書かれた看板が立っている

 2011年3月11日、大津波が襲った三陸海岸沿いの街。高台にそびえる学校は、復興の「灯」となっている。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市の鵜住居地区。真新しい住宅地の高台に、再建された鵜住居小学校・釜石東中学校が立つ。

 三陸鉄道リアス線の駅前から校舎まで175段の大階段が延びる。小学校(児童129人)が入る「階段棟」と、その奥に中学校(生徒86人)や体育館などが入る「ブリッジ棟」があり、中央の大階段が2棟をつないでいる。敷地内に幼稚園と児童館も併設している。

 標高11メートル付近にあるオレンジ色の印は、津波の高さだ。ブリッジ棟4階のバルコニーから、街と海を見下ろすことができる。

 校舎は学校建築では珍しい鉄骨造りを採用。復興当時、一般的な鉄筋コンクリート造りでは、職人不足や資材の高騰で工期が延びる可能性が高かったからだ。敷地となる山の掘削量も、当初の約56万立方メートルから13・6万立方メートルに縮小した。

 設計者のひとり、赤松佳珠子さん(58)は「工期と費用を減らし、子どもたちが少しでも早く新しい学校に戻れるようにしたかった」と振り返る。2015年夏に着工し、2017年3月に完成した。

 大階段を上り下りして登下校する子どもたちの姿を住民が見ることができ、子どもたちも校舎から街の復興を見つめることができる。赤松さんは「学校の校舎は子どもたちの活動を引き立てるもので、建築が目立ってはいけないと考えていた。けれど、この学校は街に欠かせない復興のシンボルになってほしかった」と話す。

 小学校では毎月11日を「命を大切にする日」としている。津波から身を守る教訓を説いた「てんでんこ」の歌や地元の伝統芸能「虎舞」などを児童全員が学ぶ。坂本幸治副校長(56)は「いざという時、どのように行動するかは自分にしか判断できない。学びが受け継がれ、行動できる人になってほしい」と語る。

 18日、小学校で卒業式が行われた。「喜びと希望と感謝を胸に」。児童たちが力強く誓った。

 夕方、中学生が部活動に励む体育館から明かりが漏れる。街を照らす灯のようだ。

(大石裕美、写真も)

 

 

 DATA

  設計:小嶋一浩、赤松佳珠子(シーラカンスアンドアソシエイツ)
  階数:地上4階
  用途:学校
  完成:2017年

  最寄り:鵜住居

 

建モノがたり

 徒歩約5分にある津波伝承館「いのちをつなぐ未来館」(☎0193・27・5666)では、震災当時の被災状況が分かる収蔵品や写真を見学できる。語り部の話を聞けるほか、避難路や防潮堤などの見学プログラムも実施。(前)9時半~(後)5時半(11~2月は5時まで)。(月)、年末年始休み。入館無料。