テレビの特撮シリーズなどで「出演経験」をもつ不思議な建物は、1950年代に東京都として初めて設けた浄水場だという。
オフィスビルのようなガラス張りに、キノコ形の柱をもつ外装が隣り合う。川崎市郊外の高台で異彩を放つのは、東京都民の生活を支える浄水場だ。需要に対して余裕があった隣県で分水を受ける。
設計は、日本武道館や京都タワーで知られる山田守(1894~1966)。山田守建築事務所社長で2007年完了の耐震強化の改修を担当した宮原浩輔さん(70)は「(ガラス張りとキノコ形の柱という)二つの異なる表現を対比させようという相当な思いがあったのでは」と推測する。
柱はマッシュルームコラムと呼ばれ、建築関係者は「湧きあがる水の形状を表したのでは」と想像を膨らませる。上部に広がる形は強度が高く梁(はり)が不要で、コスト削減につながった。遊び心がありながら、合理的な構造だ。山田は自然の形態に則(のっとっ)て建築を構成しようと、曲線を好んで用いた。「建築家の手触りが残る貴重なもの」と宮原さん。
1階を東へと進むと、一直線に操作廊がのびる。宮殿や宗教施設を思わせる空間は長さが110㍍あり、ここで20の濾過(ろ・か)池を管理する。
意匠性のある操作廊は珍しく、ぜいたくな空間だ。「当時ならでは。今はコストや耐久性重視で、建物づくりへの視点そのものが全然違います」と東京都水道局の河野州吾さん(58)。
1990年の改修で、柱が朱色になるなど姿を変えていたが、耐震強化の改修を機に竣工(しゅん・こう)時の姿に近づけた。館内にあった約千トンの高架水槽を屋外へ独立させて荷重を減らすことで外部へ表出する補強材を使わずに済んだり、操作廊の床を上げてケーブルを収めたりして美観を死守した。
ウルトラマンシリーズなど数々の映像作品の舞台となるなど、先端技術を扱う施設を「演じる」ことが多かった。未来を感じさせるデザインとして長く受け止められてきたのだろう。
セキュリティーの関係で機会は限られるものの、建築事務所には見学の相談が度々あるという。誕生から半世紀を超えてもなお、オリジナリティーある造形が人々を魅了し続けている。
(深山亜耶、写真も)
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DATA 設計:山田守建築事務所 《最寄り》:向ケ丘遊園駅からバス |
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車で約15分の「川崎市立日本民家園」(☎044・922・2181)には、東日本の代表的な民家など25件が並ぶ。白川郷の合掌造り民家では、山梨の湧き水で製麺したそばを楽しめる。午前9時半~午後5時(11~2月は午後4時半、入園は30分前まで)。(月)((祝)は開園)、(祝)の翌日((土)(日)(祝)は開園)休み。一般550円。