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1928ビル(旧毎日新聞京都支局)(京都市中京区)

ビルの正面。昭和、平成の時代をくぐり抜け、文化発信の拠点として令和の今も存在感を放っている

京の中心街に新聞社のレトロな元支局ビルが残る。最先端ビルとして建設され、約1世紀たった今も文化の発信を担っている。

 東海道の西の玄関口だった三条通。にぎわう通りを進むと、温かいベージュ色のビルが目に入る。1階がアパレルブランド店、2階はギャラリー、3階に劇場、地下1階にはカフェレストラン。

 かつて大阪毎日新聞社の京都支局だった。「関西近代建築の父」と呼ばれる武田五一の設計で1928(昭和3)年に完成。外観はアール・デコ様式の影響が感じられ、正面にある毎日新聞社の社章にちなんだ星形の窓とバルコニーが特徴的だ。

 木造平屋が多かった当時の京都で、鉄筋コンクリート造りの建物はひときわ威容を誇った。屋上には京都府測候所が置かれ、旗や電灯で市民に天候を知らせていたという。

 完成間もなく、京都御所で昭和天皇の即位の礼が催され、このビルから昭和の幕開けを伝える写真が最新装置で電送された。

 約70年後の1990年代末、支局の移転で解体の危機に陥った。しかし、南海電鉄の特急列車「ラピート」をデザインした地元の建築家若林広幸さんが買い取って、多額の費用をかけて耐震補強を含む大規模修繕を実施して「1928ビル」として再生した。

 今春、77歳で亡くなった若林さんはビルの魅力をかつてこう語っている。「中を見た瞬間、うわ、こんなすごい建物が京都にあったんやと感動した」「歪(ゆが)み、揺らぎが人間の心の奥にほっとした感覚を出しているほっとさせるエネルギーみたいなものが今の建築にはないものだと思う」

 地下1階のカフェレストランへ階段を下りる。床のタイルの一部やレジ付近のれんが壁は完成当時のものだ。設計図によると、支局の食堂や浴室、輪転機室だった。戦後、進駐軍のバーなどとしても使われた。壁にかすれた絵画やモザイク画などが幾重にも重なり、時が刻まれた隠れ家的な空間になっている。

 旧編集室の2階入り口付近の細かいタイルも完成当時のまま。ここにギャラリーを構え、京都の現代美術を紹介している高尚赫(しょうかく)さん(60)は「居心地がいい空気に包まれている。ビルが生きていて、血が流れている感じがします」と話す。

 3階はアーチ型天井が目を引く吹き抜けの元講堂。2階席を含めて70席余りを備える劇場になっている。

 2年後には完成から1世紀。京都大学の建築学専攻の学生や研究者らが中心になって「1928ビルの百年」プロジェクトを企画し、特別展覧会を構想している。次の100年について考える試みが動き出している。

(阿部毅、写真も)

 DATA

  設計:武田五一
  施工:大林組
  階数:地上3階、地下1階
  用途:元新聞社支局
  完成:1928年

 《最寄り駅》:京都市役所前


建モノがたり

 ビル6階のノンバーバル(言葉に頼らない)シアター「ギア―GEAR―」(☎075・254・6520)は、光や映像と連動したマイム、ブレイクダンスなどで物語を描くパフォーマンスを上演。言葉の壁がなく、外国人観光客からも人気だ。プレミアム席7800円など。公演時間とチケットの申し込みは公式サイト(https://www.gear.ac/) から。

2026年9月1日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。