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OGATA YAMA (仙台市)

ドーム状の屋根に大きな開口部が開き、自生の樹木が空へと伸びる

森の中に、屋根がなだらかなドーム状の居住空間が存在する。風が抜け、木々の音や鳥の声に包まれていた。

 「本当にここに住んでいるのですか?」。訪れる人にたずねられることがあるという。
 家具・空間デザイナーの尾形欣一さんが造り上げた居住空間「OGATA YAMA」は、仙台市郊外の泉ケ岳山麓の森の中にある。
 約280平方メートルの大きなドーム状のフォルム。壁と屋根で全体が構成され、柱はない。屋根の中央には大きな開口部があり、中心に一本の樹木がのびる。
 訪れたのは夏。周囲の緑が葉を茂らせ、OGATA YAMAを取り囲む。鳥や風が通り抜ける。日差しも雨も、冬には雪も降り注ぐ。
 門扉を備えた、いわゆる玄関はない。大きな開口部から岩のようなモルタルの塊で構成された階段を通じ、中庭となる中央の空間に下りる。気をつけないと階段を踏み外しかねないこの意匠は、「足元を意識させ、一歩の大切さ、そして一日を生きることの大切さを忘れない」という思いを込めたという。
 中庭を介した片側には約54平方メートルの客間的なメインリビングルーム。逆側は約85平方メートルのプライベート空間がある。メインのリビングルームはギャラリーとして事前予約制で公開している。
 両空間と中庭は大きなガラスで区切られている。季節をじかに感じられる。夏はよしずを使い、寒い季節は薪をたき、服を重ねる。
 ゆるやかなドーム状の屋根は、周囲の樹木からの「樹雨」で次第に石のような色に染まり、独特の存在感がうまれている。年月を経た床面も「高圧洗浄機でガーッてやれば白くなるんですけどね」と尾形さん。あえて経年変化に自然の価値を見いだす。
 尾形さんはかつて仙台市の中心部に店舗兼事務所を構え、市街地からほど近い場所に工場も借りていた。起業10年目に自社社屋の建築を計画し、この森に巡り合った。物質的な価値観が変化して「場が意味を持つ時代が来る」と直感。事務所と工場を建築し、隣地の個人住宅「OGATA YAMA」は10年の構想を経た。
 当初はオフィスも兼ねた3階建てのビルや、ガラスを多用した四角い平家の近代建築を構想したが、最終的に「この森に建てる意味」にこだわり、環境と違和感のない、なだらかな山のようでもある円環状のワンフロアの形に落とし込んだ。
 洞窟のようでもある原始的な空間だが、「僕にとっては最先端なんです」と語る。 (見沢康、写真も)

 

 DATA

  設計:尾形欣一デザインオフィス、アトリエ海
  階数:1階
  用途:住居(一部をギャラリーとして公開)
  完成:2019年

 《最寄り駅》:仙台市地下鉄南北線泉中央駅からバス利用


建モノがたり

「オーエンス泉岳自然ふれあい館」(☎022・379・2151)は、冬はスキー、春から秋には登山やハイキング、自然観察、キャンプなど、泉ケ岳周辺での自然体験を支える案内や休憩、宿泊の拠点だ。山歩き用の無料マップも置いてある。仙台市地下鉄南北線・泉中央駅からバスで約45分。OGATA YAMAからは車で約10分。総合案内は、午前8時半~午後5時・年中無休。

2026年9月8日、朝日新聞夕刊記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください。